自己破産は、破産法によって定められた手続きです。破産法15条により、「債務者が支払不能にあるときは、裁判所は破産手続を開始する」とされています。

「支払い不能」とは、今月分の支払いができないというだけでなく、それ以降も継続して返済が不能である状態を指します。また、その人が支払い不能であるかは、所有している財産の状況や、今後の収入の見込みなどにより総合的に判断されます。

1.自己破産が認められる基準はあるのか

したがって、自己破産するのは借金の額が何百万円以上である場合などと一律に判断することはできません。借金の額が年収を大きく上回っている場合に、自己破産を選択するべきだといわれることもありますが、いつでもそのような基準が当てはまるわけではありません。

たとえば、借金の総額が100万円未満で年収には満たなかったとしても、高齢で収入が年金のみであるとか、病気や怪我のために今後の収入増が見込めないのであれば、自己破産をすることもあります。

また、生活保護を受けている場合には、保護費から返済をすることはできないので、借金の額がいくらであろうと自己破産の申立をすることになります。

一方では、収入が多い場合には、年収以上の借金があっても支払い不能にはあたらないと判断されることもあるでしょう。

たとえば、年収が1,000万円もあるような場合には、収入の半分以上を支払いに回すことも可能かもしれません。そうであれば、借金の額が1,000万円あったとしても、任意整理による分割弁済ができることになります。

2.支払不能であるかはどう判断されるのか

任意整理をすることにより3年から5年の分割であれば支払いが可能であると判断される場合であっても、そんなに支払いを続けるのは大変だから自己破産してしまいたいとの相談をいただくこともあります。

そのようなケースについても程度問題ではありますが、支払いを続けるのは無理だと本心から考えているのであれば、客観的に見れば支払いが可能だと思われるときであっても、自己破産ができることもあるでしょう。

しかし、任意整理でも自己破産でもその後のデメリットは大差ないのだから、自己破産をしてしまって早く楽になりたいというような場合はどうでしょうか。

支払不能だというよりは、支払いたくないから自己破産したいというわけです。

これは相談する専門家によっても意見が違うかもしれませんが、支払不能では無いのだから自己破産はできない(破産手続の開始決定が出ない)と考えるべきでしょう。

自己破産の申立をする際には、直近2か月分の家計収支表を提出します。これにより、裁判所では収入と支出が把握できるので、支払不能であるかの判断も可能であるわけです。

収入の額が同じであっても、家族構成やその他の事情により支出の額は大きく異なります。たとえば、実家暮らしの独身者であれば、収入の大部分を支払いに回すことも可能なはずです。

そのような場合に、十分に支払いが可能であるはずなのに、支払いたくないから自己破産したいといっても認められないということです。

破産法

(破産手続開始の原因)

第15条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第30条第1項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。

2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

(破産手続開始の決定)

第30条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、破産手続開始の決定をする。

一 破産手続の費用の予納がないとき(第23条第1項前段の規定によりその費用を仮に国庫から支弁する場合を除く。)。

二 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

2 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。