任意整理を弁護士や認定司法書士(以下、「弁護士等」とします)に依頼した場合、その弁護士等が依頼者の代理人となって債権者との交渉をおこない和解契約を締結します。

債権者との和解交渉や和解契約書の作成(債務者の署名押印)についても代理人である弁護士等がおこないますから、任意整理における相手方とのやり取りのすべては代理人にまかせていれば良いというわけです。

そして、和解が成立した後には、その内容に従って支払いをおこなっていくわけですが、この支払期間中も弁護士等が代理人で居続けるのか、それとも、途中で辞任してしまうかによって大きな違いがあるので注意が必要です。

1.委任契約がいつ終了するのか

2.委任契約終了後の問題点は

3.任意整理中に代理人が辞任するケース

3-1.和解契約締結前に代理人が辞任するケース

3-2.任意整理による支払いの途中である場合

1.委任契約がいつ終了するのか

任意整理による支払期間は3年から5年程度の長期間に渡ることもあります。そしてこの支払期間中に債権者と連絡を取り合う必要が出てきたとき、代理人がすでに辞任している場合には債務者ご自身が債権者とやり取りしなければならなくなります。

弁護士等が代理人を辞任するのは、依頼者から費用(弁護士等の報酬)の支払いがない場合や、依頼者と連絡が取れなくなった場合の他に、和解契約を締結し依頼者に和解契約書を渡した時点で委任業務が終了するとしている場合もあります。委任業務が終了するとはつまり、弁護士等が代理人を辞任するということです。

「任意整理による支払いが完了するまで委任契約を継続させる」のか、それとも、「和解契約書を引き渡した時点で委任業務が終了し弁護士等が辞任する」のか、これは任意整理の依頼をして委任契約を締結するときまでに説明があるはずです(もし、ちゃんとした説明が無い場合にはしっかりと確認をするか、またはその弁護士等の事務所へ依頼するのは避けるべきでしょう)。

2.委任契約終了後の問題点は

弁護士等との委任関係が終了し、弁護士等が代理人を辞任した後には、債権者とのやりとりは全て債務者ご自身がおこなうこととなります。

たとえば、月々の支払いが遅れた場合の連絡(督促)は、債権者から直接来ることとなります。電話であれば携帯電話や自宅にかかってきますし、郵便物がご自宅に送られてくることもあるでしょう。

また、月々の支払いが遅れていない場合であっても、債権者側の都合(会社合併や債権譲渡など)により振込先が変更になるのもよくあることです。このような通知も、ご自宅に郵便で送られてくることになります。

債務整理することをご家族が知っている方や、一人暮らしの方なら問題ないかも知れませんが、内緒で債務整理していた場合は非常に困ったことになります。

これに対して、任意整理による支払いが完了するまで、弁護士等との委任契約が継続している場合、つまり、弁護士等が債務者代理人でありつづけるならば、全ての連絡は代理人である弁護士等を通じておこなわれることになります。

それならば、弁護士等に任意整理を依頼した際に取り決めした連絡方法、たとえば、ご自身の携帯電話のみとか、まずは必ずメールで連絡するとか、そういった方法により代理人と連絡を取り合うことができます。よって、任意整理をしていることが家族等に知られてしまうことはないわけです。

ここまでのご説明からお分かりいただけると思いますが、本来であれば、任意整理による支払いが完了するまで、弁護士等とご依頼者との委任関係は継続させるのが、債務者(ご依頼者)にとって望ましいことです。

しかし、業務の効率性を高めるため、和解交渉が完了し、和解契約書をご依頼者に渡した時点で、弁護士等が代理人を辞任するとしている事務所もあるようです。この違いは非常に大きなことですので、任意整理の依頼をする前にちゃんと確認するべきです。

3.任意整理中に代理人が辞任するケース

ここまで説明してきたのは、弁護士等との委任契約の内容にしたがって弁護士等が代理人等を辞任する時期についてですが、依頼者の側の問題により債務整理業務の途中で弁護士とが代理人を辞任する場合もあります。

3-1.和解契約締結前に代理人が辞任するケース

弁護士等に債務整理を依頼したら、債務整理費用(弁護士等の報酬)の支払いをします。債務整理費用を一括で支払えるというケースは少ないでしょうから、委任契約を締結してから分割で支払っていくという場合が多いでしょう。

そして、委任契約時に決めた支払方法にしたがって、3ヶ月などの期間で債務整理費用を支払っていくわけです。

弁護士等へ債務整理の依頼をし、弁護士等が債権者に受任通知を送付した時点で、債権者への支払はいったん停止します。そして、そもそも支払えるはずの金額での分割払いを決めているのですから、通常であれば支払えないことは無いはずなのです。

しかし、予定どおりに給料が支給されなかったりしたことで、最初に決めたとおりの支払が出来ないこともあるでしょう。そういうときでも、依頼した弁護士等に事情を話せば相談に乗ってくれるのが通常だと思われます。事情によっては、月々の支払い金額を変更してくれるかもしれません。

それにもかかわらず、約束の金額が払えないときに、弁護士等と連絡を取れなくしてしまうのは問題です。弁護士等から、何度電話をしても手紙を送っても連絡が取れなくなってしまったならば、代理人を辞任するしかありません。

そうなれば、債権者からの督促が直接来るようになりますし、一旦、債務整理を開始した時点で一括請求の対象となっていますから、弁護士等に債務整理を頼む前より状況は悪化してしまう恐れもあります。

最初に依頼した弁護士等に辞任されてしまった場合に、それでも債務整理をしようとするならば、別の弁護士等に依頼することになります。その場合、費用が余計に掛かることもありますし、時間的、精神的負担も大きくなります。

最初と事情が変わって約束どおりに払えなくなってしまった場合でも、依頼した弁護士等へすぐに連絡して今後のことを話し合っていくべきです。

なお、多くの弁護士等は債務整理の依頼後に約束どおり払えなくなった場合でも、相談に応じてくれるはずです。しかし、当初の約束どおりの支払いがない場合には、その事情などに関係なく直ちに代理人を辞任してしまう弁護士等もいるようです。

丁寧な対応をしている弁護士等であれば、依頼時にそのような場合の対応についての説明もあるはずです。もしも、何も説明が無い場合は確認をするのが良いでしょうし、明確な答えが得られない場合は、その弁護士等へ依頼するのは避けた方が良いでしょう。

3-2.任意整理による支払いの途中である場合

任意整理による返済は3年から5年程度の長期間に渡ることも多いです。このような長い時間の間には、失業や収入の減少などの事情により当初の予定どおりに払えなくなってしまうこともあるでしょう。

その場合、本当に払えなくなってしまう前に、代理人である弁護士等に連絡し相談するようにしましょう(ただし、弁護士等がすでに代理を辞任してしまっている場合には、払えなくなってしまった場合の相談には応じてくれないこともあります。その場合には、新たに別の弁護士等へ相談するしかありません)。

支払い不能な期間が長期に渡るようであれば、任意整理により払っていくのを断念して自己破産や民事再生の申立をすることもあります。任意整理による支払い中だから、自己破産をするときに問題が生じるというようなこともありません。

しかしながら、依頼者本人が債権者への支払いを直接おこなっている場合に、支払いが遅れていることを債権者からの連絡で知ることもあります。また、弁護士等が返済代行をおこなっているのであれば、何の連絡も無しに弁護士等への月々の支払いが滞ることもあります。

その場合でも、ただちに弁護士等が代理人を辞任するのでは無く、ご依頼者に連絡を取ろうと試みるのが通常でしょう。しかし、電話をしても手紙を送っても、どうしても連絡が取れなくなってしまうことがあります。

その場合は、どんなに良心的な弁護士等であっても、やむを得ず代理人を辞任することとなってしまいます。そうなれば、債権者から一括返済の請求が直接来ることとなりますし、その後の債権者との対応をご自身で行わなければなりません。

弁護士等との連絡を自分から絶っても決して良いことは決してありません。一旦、債務整理の手続を弁護士等に依頼したら、全ての債務が無くなるまで相談に乗って貰うべきです。

そして、困ったことがあったときでも最後まで相談に乗ってくれる弁護士等に依頼するのも大切なことです。弁護士等に債務整理を依頼するときは、じっくりと弁護士等の説明を聞いて、納得がいくまで質問をしてからにしましょう。そういう手間を面倒がる弁護士等には債務整理の依頼をするべきでありません。