任意整理の和解契約書には、「2回分以上の支払いが遅れた場合には当然に期限の利益を喪失する」というような条項が入っていることが多いです。この「期限の利益を喪失する」とはどういうことなのでしょうか。また、現実に期限の利益を喪失してしまった場合、債権者はどのような対応をしてくるのでしょうか。

任意整理で2回分の支払いが遅れた場合
1.期限の利益の喪失とは
2.現実の債権者の対応はどうなっているか
3.再度の任意整理の検討

1.期限の利益の喪失とは

任意整理の和解書には「期限の利益の喪失」に関する条項が入っているのが通常です。たとえば次のような定めです。

乙が分割金の支払を2回分以上怠った時は当然に期限の利益を喪失し、第1項記載の金員から、既払金を控除した残額に対し、期限の利益喪失日の翌日から完済に至るまで、年14.60%の割合による遅延損害金を付加して一時に支払う。

期限の利益とは、コトバンクによれば「期限が定められていることによって債務者が受ける利益」と解説されています。

「毎月末日までに○円を支払う」というような期限が定められていることにより、その期限が来るまでは支払いをしないでも、督促を受けたり、遅延損害金が加算されたりすることが無いわけです。

ところが、期限の利益が失われてしまったとすると、残り全額をただちに支払うように督促を受けることになりますし、支払いをするまで遅延損害金が加算されてしまうことにもなるということです。

つまり、期限の利益を喪失してしまった場合は、債権者からの一括請求の対象となりますし、残額に対して遅延損害金を加算して支払いをする必要があるわけです。

2.現実の債権者の対応はどうなっているか

任意整理の和解契約書に「期限の利益の喪失」についての条項が入っており、現実に2回分の支払いが遅れてしまったことにより、期限の利益を喪失してしまったとします。

このような場合でも、早期に支払いを再開し延滞を解消するように努めれば、そのままの分割払いを継続出来ることも多いと思われます。そして、当初の和解契約にしたがった全額の支払いが完了すれば、遅延損害金の支払いも求められること無しに、完済の扱いにしてもらえることも多いはずです。

よって、2回分以上の延滞が発生したことにより、契約上は期限の利益を喪失してしまったはずの場合であっても、まずは、出来るだけすみやかに支払いを再開することを考えるべきです。

しかしながら、すぐに支払いが再開出来ずに延滞分が3回、4回と増えてしまったようなときには、債権者から一括返済を求められることもあります。また、債権者によっては2回分以上の遅れが発生したときには、ただちに一括払いの請求をしてくる場合もあるかもしれません。

3.再度の任意整理の検討

すでに債権者から一括払いの請求を受けてしまっている場合には、そのまま分割による支払いを続けようとしても、債権者からの督促は止まず、遅延損害金が加算され続けてしまうこともあります。

任意整理を代理人(弁護士、認定司法書士)によりおこなっている場合には、代理人を通じて再び分割により支払えるように申し入れをすることも考えられます。しかし、当初依頼した代理人が辞任してしまっているときには、ご自分で交渉をするか、または、新たに別の専門家に依頼して交渉をおこなってもらうことになります。

新たに専門家(弁護士、認定司法書士)に依頼する場合には、再度の任意整理をすることになるので、専門家に支払う報酬もまた新たにかかってしまうことにはなります。それでも、せっかく1度は任意整理をして支払いをしてきたのですから、そこで諦めてしまうこと無く、まずは相談だけでもしてみるのがよいでしょう。

再度の任意整理(再和解の交渉について)