再生計画に従った支払いが履行困難となった債務者の救済手段として、「再生計画の変更」と「ハードシップ免責」があります。

再生計画の変更は、やむを得ない事由により再生計画を遂行することが著しく困難となったときに、再生計画で定められた債務の最終の期限を最長2年延長することができる制度です。

ハードシップ免責は、 再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となった場合に、未履行の再生債権について免責の決定をすることができるというものです。

ここでは、再生計画の変更とハードシップ免責について解説しますが、そのどちらも不適当な場合には、新たに自己破産の申立をするなどの方法も検討すべきでしょう。

再生計画の変更とハードシップ免責(目次)
1.再生計画の変更
2.ハードシップ免責

1.再生計画の変更

再生計画認可の決定があった後、やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができます(民事再生法234条)。

再生計画の変更では、変更後の債務の最終弁済期は、再生計画で定められた債務の最終弁済期から2年を超えない範囲で定めなければならないとされています。

つまり、再生計画の変更により、再生計画で定められた最終弁済期を最長2年延長できるわけです(再生計画で定められた弁済総額は変更されません)。

再生計画の変更を申し立てるには、再生計画変更申立書、変更計画案を作成し、裁判所に提出します。その後の手続は、再生計画案の提出があった場合の手続が準用されます。

2.ハードシップ免責

再生債務者が、その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となった場合に、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができます。これが「ハードシップ免責」ですが、ハードシップ免責が認められるためには次の要件があります(民事再生法235条1~4号)。

  1. 再生計画による変更後の基準債権および基準債権と同様に扱われる再生債権に対して、その4分の3以上の弁済を終えていること。
  2. 非減免債権のうち、民事再生法156条の一般的基準に従って弁済される部分に対して、その4分の3以上の弁済を終えていること。
  3. 免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
  4. 再生計画の変更(民事再生法234条)をすることが極めて困難であること。

3の「免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと」とは、清算価値保障原則を定めているもので、この場合の清算価値は、ハードシップ免責決定時の清算価値ではなく、再生計画認可決定時の清算価値によります。

ハードシップ免責の申立をするには、ハードシップ免責申立書を作成し、裁判所に提出します。申立書に記載すべき事項は次の通りです。

民事再生規則133条(計画遂行が極めて困難となった場合の免責の申立ての方式)

 民事再生法235条第1項の規定による免責の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 再生事件の表示

二 申立人の氏名及び住所並びに代理人の氏名及び住所

三 免責を求める旨及びその理由

2 免責を求める理由においては、民事再生法235条第1項に規定する要件に該当する事実を具体的に記載しなければならない。

3 第1項の申立書には、前項に規定する事実を証する書面を添付するものとする。

ハードシップ免責の申立があった場合、裁判所は、届出再生債権者の意見を聴いた上で、要件を満たしていれば免責決定をします。

免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(非減免債権および再生手続開始前の罰金等を除く)の全部についてその支払い義務を免れます。