勤務先に対して債務がある場合を除いて、裁判所や破産管財人から勤務先へ連絡が行くことはありません。

また、破産手続開始の決定があったときは官報により公告されますが、勤務先が金融機関等である場合を除けば、自己破産した事実が官報公告によって勤務先に知られる恐れはほとんどありません。

1.裁判所からの通知等によって知られるか

勤務先に対して債務(借入)などがある場合、自己破産するときには勤務先を債権者名簿に記載しなければなりません。この場合、裁判所から勤務先へ文書が届くこととなりますから、自己破産した事実が知られることになります。

そのような場合を除いては、裁判所や破産管財人から勤務先へ連絡が行くことはありません。たとえ、勤務先への事実確認が必要だと考えるような場合でも、裁判所が勤務先へ直接連絡を入れるようなことはありませんから、自己破産した事実が知られることはありません。

2.官報公告により知られる可能性

破産手続開始の決定があったときは官報により公告されます。したがって、誰かが自己破産した場合に、それを第三者が知ることは可能です。

実際、勤務先が金融機関等である場合には、破産手続開始決定の官報公告をチェックしており、従業員が自己破産した場合にもその事実を把握するということもあるかもしれません。

しかし、一般企業や個人が官報公告の情報を常に確認しているという可能性は極めて低いと考えてよいでしょう。したがって、自己破産した事実が官報公告により勤務先に知られるという心配は不要なはずです。

なお、平成21年から平成27年までの7年間に、自己破産の申立をした人は633,080人もいます(法人を除いた、自然人のみの数)。免責許可の決定が確定したときから、7年以内に再度の免責許可を受けることはできませんから、この約63万人はすべて別人であることになります。

現実には、これだけ多くの人が自己破産をしていますが、そのことを勤務先に知られてしまったケースなどごく僅かでしょう。

3.裁判所提出書類の準備

自己破産申立のために、裁判所へ提出する書類の準備をする際、勤務先に協力を要請しなければならないことああります。

たとえば、財産目録記載の疎明資料として、退職金見込額がわかる資料の提出が求められます。退職金支給規定等が入手できて、正確な退職金額が計算可能であればよいとして、そのような資料がないときには勤務先に書類を出してくれるよう頼まなければならないでしょう。

また、源泉徴収票、給与明細などが手元に無い場合に、勤務先から再度交付してもらう必要があるかもしれません。そのような場合、正直に自己破産すると伝える必要はありませんが、使い道を説明するのに苦慮するかもしれません。

それでも、自己破産申立を依頼した弁護士や司法書士と相談しながら進めていけば、問題が生じないケースが多いはずです。