自己破産した場合、持ち家は手放すことになりますが、債務者所有不動産の処分はどのようにおこなわれるのでしょうか。

自己破産と持ち家の処分

自己破産と不動産の処分(目次)
1.同時破産廃止となる場合
2.破産管財人による売却
3.破産財団から放棄されるとき
4.持ち家にはいつまでいられるのか

1.同時破産廃止となる場合

住宅ローン支払中の持ち家の場合には、「住宅ローンの残額」と「不動産の現在価値」によりまず判断されます。

「住宅ローンの残額」が「不動産の現在価値」を大幅に上回っているときは、破産管財人が不動産の売却をおこなっても、破産債権者へ配当をおこなえる見込みがありませんし、不動産の売却代金を破産手続の費用に充てることもできません。

このような場合には、持ち家がある場合であっても破産管財人が選任されることなく、同時破産廃止となることもあります。裁判所により基準が異なることがありますが、概ね1.5倍以上のオーバーローンの状態であれば同時破産廃止とな場合が多いでしょう。

破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない(破産法216条1項)。

同時破産廃止になったときには、不動産の処分は破産手続の中ではおこなわれません。

この場合、抵当権者が不動産競売の申立てをしたり、または、破産者に対して任意売却への協力を求めてくることもあります。競売手続がおこなわれたときは持ち家が競落されたとき、または、任意売却であれば定められた引渡期日に持ち家を明け渡すことになります。

2.破産管財人による売却

同時破産廃止とならないときには、破産管財人による破産財団の管理・換価がおこなわれます。

破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属するとされています(破産法78条1項)。

破産者の持ち家も、破産財団に合まれますから、その管理・処分権限も破産管財人にあるわけです。したがって、破産者は、破産管財人の指示に従って持ち家を明け渡さなければなりません。

3.破産財団から放棄されるとき

破産管財人が、不動産の売却をするよう努力をしてみたものの、処分することが著しく困難であることが判明したり、または、処分できたとしても破産債権者への配当の見込みがないことが判明することもあります。

このような場合に、売却しようとの試みを続けても、破産債権者にメリットがないと判断するときには、裁判所の許可を得て破産財団から不動産を放棄することもできます。

持ち家が破産財団から放棄されたときは、同時破産廃止になった場合と同様に、抵当権者が不動産競売の申立てをしたり、または、破産者に対して任意売却への協力を求めることによって不動産の処分がおこなわれます。

4.持ち家にはいつまでいられるのか

破産申立をしても、ただちに持ち家を出なければならないとは限りません。破産手続が開始され破産管財人が選任されたときには、持ち家の管理・処分権限は破産管財人にあります。

破産手続が開始した時に、破産者が持ち家に居住している場合、破産管財人としていつ不動産の明け渡しを求めるかは、個々のケースによっても異なります。

たとえば、その持ち家がすぐにでも売却できそうな場合には、早期の退去を求められることもあるでしょう。一方では、なかなか買い手が付かないと予想される場合には、しばらく住み続けることも認められるかもしれません。

また、不動産が破産財団から放棄されたときや、同時破産廃止になったときは、その持ち家の管理・処分権限は破産者自身にあることになります。

この場合、抵当権者が任意売却に協力を求めてきたときには、引き渡しの時期や、引越費用の不足分をどうするかなどについて交渉する余地もあるでしょう。ただし、最終的には抵当権者は不動産の競売申立をすることもできるのであり、破産者の側が主張できる範囲は限定されます。

このように、破産申立をした後に、ただちに持ち家を明け渡す必要はないとしても、明け渡しまでの期間がせいぜい数ヶ月変わってくる程度なのであり、その後どこに住むのかは早めに考えておくべきでしょう。出て行かねばならない直前になって、慌てて住む場所を探そうとするのでは遅いです。