「自己破産するシニアが増えている意外な原因」とのタイトルの、読売新聞の配信によるYahoo!JAPANニュースの記事がありました。

2016年の自己破産の申し立てが6万4000件を超え、13年ぶりに増加に転じた。かつて、多重債務は無計画な若い世代の問題とされていたが、最近では働き盛りの中年や退職したシニアが、カードローンなどをきっかけに自己破産に陥るケースが目立つという。なぜ、中高年の自己破産が増えているのか。

自己破産の件数は長らく減少傾向にありましたが、2016年の自己破産件数は13年振りに増加に転じました。そして、日本弁護士連合会と消費者問題対策委員会が集計した調査結果によれば、20歳代と30歳代で自己破産者は減少している一方で、40歳代以上の自己破産が増加しているというのです。

1997年に12%だった60歳代の自己破産者は2014年には6.7ポイント増の18.71%に。70歳以上で比較すると、1997年はわずか1%でしたが、2014年には8.63%と、大幅に上昇していることが分かります。

自己破産者のうち、70歳以上が8.63%もいるとは驚きです。70歳を超えてから、裁判所へ行って自己破産手続きを取らなければならないとは、肉体的にも精神的にも負担が大きいことでしょう。しかし、借金が出来なくなってしまったならば、家族に迷惑をかけるより自己破産を選択するというのも仕方の無いところです。

自己破産者が増加した理由としては、この記事にも書かれているとおり、銀行が個人向けのカードローンに力を入れたことがまず挙げられます。実際に、債務整理の相談をしていると、銀行のカードローンを複数利用している方がとても多いです。

とくに、クレジットカードの支払いが厳しくなった後に、銀行のカードローンを利用しはじめているという例を良く見かけます。銀行カードローンは100万円、200万円と1社からの借入額が多い上に、そのような借入を複数の銀行からしているわけです。

銀行は総量規制の対象外ですから、他社からの借入がある人であっても貸付をすることが可能です。しかし、上記のように明らかに過剰融資だと思われるケースも多く、支払い可能であるかの審査をちゃんとおこなっているかが疑問です。

銀行としては、支払いが滞った場合には、保証会社となっている自行傘下の消費者金融等から代位弁済を受ければ良いのですから自らの懐は痛みません。そうして、銀行と消費者金融が一体となって過剰融資を続けてきたことが、自己破産者の増加に繋がっているというわけです。

ここまでは債務整理の業務に携わっている司法書士等からすれば当たり前の話ですが、この記事ではもう一つ「意外な原因」を挙げています。

10~20年前の借金の返済を続けている人が高齢化し、退職・失業、年金生活、病気などをきっかけに自己破産するケースが増えていると説明します。長年潜んでいた問題が、団塊世代の定年退職などと重なるこの時期に顕在化しているということです。

現役時代は何とか払えていたものの、利息程度の支払いしか出来ていなかったために、元金はほどんどそのまま残っていた。それが、定年や病気によって退職し収入が減少したために支払えなくなってしまうと。

私自身も年金しか収入が無い方からの債務整理のご相談を受けたことは何度もあります。年金生活になってから新たに借金をするというのはあまり考えられないので、ほとんどの場合、給与所得などがあった頃からの借り入れであるわけです。

また、自営業者などの場合には、歳を取ってくるにつれて以前のように収入を得ることが難しくなり、借金の返済が困難になるというのは良くある話です。

自営の収入が激減したものの蓄えはほとんど無く、年金は国民年金だけ。そのような状況では、そもそも生活をしていくのも困難なのに、さらに借金の返済をすることなど不可能です。そのような場合には、自己破産などの債務整理をおこなうのに加え、その後は生活保護を受ける必要もあるかもしれません。

今後は、高齢者の割合がより一層高くなっていき、生活に困窮する高齢者も激増していくことでしょう。その一方で、高齢者を支える現役世代の数はどんどん減っていくわけですから、根本的な解決策はなかなかないというのが現実です。

それでも、少なくとも借金を無くすことが出来れば、最低限の生活を送れるようになる可能性は高まります。収入の減少により借金の返済が困難になってしまったときは、早めに専門家に相談して債務整理の手続きを検討すべきでしょう。