債務整理の一つである任意整理とは、裁判所を通じることなく、債務者代理人(弁護士、認定司法書士)と債権者とが直接話し合いをすることで、債務の支払いについて和解する手続きです。

任意整理は話し合いによる和解手続きなのですから、当事者双方が合意すればどのような内容の和解をしても差し支えないわけです。

そうはいっても、交渉次第でどうにでもなるというものではなく、債権者が独自に和解の基準を決めているのが通常でしょうし、一般的な目安としての基準もあります。

ここでは、現時点でクレジットカード、消費者金融、銀行カードローンなどの債務を任意整理する場合の、和解内容の目安について説明します。

任意整理の和解内容(目次)
1.任意整理での支払い回数
2.任意整理和解後の利息・損害金
3.和解するまでの経過利息
4.元金を下回る金額での和解

1.任意整理での支払い回数

任意整理の支払い回数は、36回を目安にしている債権者が多いと思われます。

36回以内でないと和解に応じないという債権者は少数ですが、それ以上の回数でないと月々の支払いが出来ないという場合、任意整理はそもそも適切でないということも考えられます。

任意整理では、月々の生活を切り詰めれば何とか支払えるくらいの金額を、月々の支払い原資として設定するのが通常です。そのような支払いを3年に渡って続けることができたら、任意整理による債務整理を遂行できるわけです。

任意整理による支払期間が3年でなく、4年、5年と長くなっていった場合、そのように切り詰めた生活を続けるのが困難になる可能性も高まります。

よって、債権者が応じるかどうかという前に、和解契約に従った返済を確実におこなえる期間の目安として36回程度までが適切だともいえるわけです。それ以上の回数でないと支払いが出来ないという場合には、個人民事再生、自己破産の検討をするべきかもしれません。

ただし、多くの債権者は60回程度までの支払い回数での和解契約には応じてくれます。どうしても、民事再生や自己破産ではなく、任意整理によって全額を支払いたいと考える場合には、支払い回数を増やしての和解を検討する余地もあるでしょう。

2.任意整理和解後の利息・損害金

任意整理では和解後の利息を付加しないものとする和解が通常です。

一部の債権者については、和解後の利息(将来利息)を付加するとの内容で無ければ和解に応じないと主張してくることもありますが、大手の貸金業者(クレジット会社、消費者金融)であれば将来利息を付けない和解に応じるはずです。

大手であっても、最初は将来利息を付加するよう求めてくることもあるようです。しかし、私の知る限り、テレビCMをやっているような大手の貸金業者で、将来利息を付加しないと任意整理の和解に応じないところは現時点では存在しません。

3.和解するまでの経過利息

任意整理では最後の取引時点での元金により和解をするのが原則です。

しかしながら、債権者によっては、元金に和解日までの利息を加算した金額での和解を求めてくることもあります。債権者としては、法定利息の範囲内であれば利息の請求をするのは正当な権利であり、任意整理だからといって元金のみでの和解に応じる義務はありません。

それでも、交渉次第では利息の免除を受けられることもあるでしょうし、また、仮に利息を付加するとしてもその一部のみとする和解が出来るかもしれません。

債権者が和解のときまでの利息の請求をしてくる場合、会社としての方針であるのが通常なので、交渉したからといって必ず利息の免除が受けられるわけではありません。

それでも、債務者の代理人としては必要に応じて粘り強く交渉することも求められます。弁護士や認定司法書士に任意整理を依頼する場合、どのような和解内容になるのかの目安についても事前に聞いてみるのがよいかもしれません。

経験豊富な専門家であれば、多くの貸金業者と任意整理の和解交渉をした経験があるでしょうから、手続きをする前にある程度の見通しを立てることが可能なはずです。

4.元金を下回る金額での和解

利息制限法の上限金利を上回る、いわゆるグレーゾーン金利での借入があった場合には、法定金利による再計算をおこなった上で、その元金をベースとした和解契約を結ぶことになります。

しかしながら、全ての取引が法定金利内の利息による場合には、任意整理をするのに当たって元金が減額される余地はありません。現在の借入残高そのままが任意整理をする際の元金となります。

かつては任意整理の場合であっても債務者の支払い能力によっては、代理人により減額交渉をすることで、元金を下回る金額での和解契約が結ばれることもありました。また、親族の援助などにより一括払いすることを前提として、債権者に対して減額交渉をすることもありました。

しかし、現在では元金を下回る金額での和解交渉に応じる債権者は殆ど存在しないと思われます。利息や損害金を付加した金額で請求されているのを、交渉により元金のみでの和解となることはあったとしても、そもそもの借入元金を下回る金額での和解は困難だということです。

したがって、元金を分割払いで支払うことすら困難であるという場合には、任意整理以外の債務整理方法を検討することになります。