債務整理(任意整理、自己破産、民事再生)をすると、クレジットカードで購入した商品は債権者に返却することになるのでしょうか。

クレジットカード会社の会員規約を確認してみると、「購入された商品の所有権は、お支払いが完了するまでは当社にあるものとします」というような条項が入っています。

つまり、クレジットカードで購入した商品は、支払いが終わるまでは自分のものにはなっておらず、クレジットカード会社に所有権があるのです。これを所有権留保(しょゆうけん りゅうほ)と言っています。

上記の定めはエポスカードのものですが、セゾンカード、三井住友カードなどでも同様に所有権留保についての規定があるのが分かります。

セゾンカード規約 
第9条(商品の所有権)
購入された商品の所有権は、完済いただくまで当社に留保されます。

三井住友カード会員規約
第29条(債権譲渡の承諾等)
4.会員は、カード利用により購入した商品の代金債務を当社に完済するまで、当該商品の所有権が当社に帰属することを承諾するものとします。

エポスカード規約
第8条(商品の所有権)
購入された商品の所有権は、お支払いが完了するまでは当社にあるものとします。

クレジットカードでも一括払いであれば、その商品の代金を支払った時点で所有権が購入者(カード会員)に移ります。しかし、分割払いやリボ払いでは代金の支払いが完了するまでは、カード会社に商品の所有権があるのです。

それでは、商品の所有権はカード会社にあるとして、債務整理をした場合に購入した商品の返却を求められるのでしょうか?

これは個々のクレジットカード会社によっても取り扱いが違うでしょうし一律に断定することはできませんが、とくに高価な商品を除いては返却を求められないのが通常です。

たとえば、高額な家電製品や貴金属、鞄などであれば返却を求められることもあります。しかし、それ以外の高額ではない商品を多数購入していたような場合には、返却を求められないのが通常だと思われます。

また、商品の所有権がクレジットカード会社にあるとして返却を求められたときでも、必ずしも返却しなければならないとは限りません。

たとえば、購入してから時間が経っているときや、故障してしまっているような場合、そのことを伝えれば返却しなくて良くなることもあります。そのようなものを返却して貰っても、オークションなどによる換金処分は困難だからです。

私が取り扱った債務整理(任意整理)では、当初は購入した貴金属の返却を求められたものの、商品を返却せずに残債務全額の支払いをすることで和解に応じてもらえたこともあります。

たとえば、ローンで購入した自動車については、債務整理をすればほぼ確実に返却することになります。そして、ローン会社は返却された自動車をオークションに出して売却することで、残債務の支払いに充てようとするわけです。

しかし、自動車以外のオークション市場が確立していない商品については、返却を受けても高値で処分するのは難しいことが多いでしょう。

そのため、何が何でも商品の返却を要求するのではなく、柔軟に対応してくれる場合もあるのだと思われます。ただし、あくまでも個々のケースによりますし、返却しなければ和解が出来ないこともあります。

債務整理をする以上は、商品を返却することによって少しでも債務が圧縮できるのだとすれば、商品を持ち続けるのに固執すべきでないのは当然です。

それでも、個々の事情によってはどうしても商品の返却を避けたい場合もあるでしょうから、まずは債務整理を依頼する専門家(弁護士、認定司法書士)に相談してみるのが良いでしょう。