債務整理をする際、自宅を売却し手放す必要があるのかは重要な関心事だと思います。まず、自己破産する場合には、住宅ローンの有る無しにかかわらず、自宅は手放すのが大原則だとお考えください。

そこで、自宅を維持しながらの債務整理を希望するときには、任意整理、個人民事再生のいずれかかが選択肢となります。

1.任意整理をするとき

2.個人民事再生手続きのとき

2-1.住宅ローンがない場合

2-2.住宅ローンの残りが少ない場合

2-3.住宅ローンがオーバーローンの状態である場合

1.任意整理をする場合

任意整理をする際、住宅ローンがある場合でも住宅資金の債務については債務整理の対象外とするのが通常です。つまり、住宅ローン以外の債務について任意整理をおこない、住宅ローンについては何もせずにそのまま支払いを継続するということです。

任意整理では、絶対に全ての債権者を債務整理の対象とする必要があるわけでは無いので、住宅ローンだけで無く自動車のローンなども対象外にすることがあります。

ただし、債権者の側からすれば、自分以外の一部の債権者については当初の約定どおりに支払うというのは不公平です。そのため、住宅ローンを債務整理の対象外にするのは仕方ないとしても、それ以外の債権者まで債務整理の対象外とするのは極力避けるべきです。

なお、住宅ローンを当初の約定どおり支払うのでは、任意整理による支払い計画を立てるのが困難だという場合、債務整理の手段として任意整理が不適当だとも考えられます。

そのような場合に、ローン支払中の自宅を維持しながら債務整理する方法としては、個人民事再生の利用を検討します。

また、住宅ローン以外の債務について任意整理するのと併せて、住宅ローンについては支払期間延長など「返済方法の変更」の手続きをすることも考えられます。

返済方法の変更(住宅金融支援機構)

2.個人民事再生手続きの場合

2-1.住宅ローンがない場合

住宅ローン債務の無い自宅の場合、自宅の評価額がそのままご自身の財産であることになります。個人民事再生手続きにおいては、自分の財産を全て清算した場合の価値を上回るだけの金額を最低でも支払わなければなりません(清算価値保証の原則)。

住宅ローンの残が1000万円で自宅の価値が500万円ならば、500万円のオーバローンですから清算価値に組み入れるべき財産にはなりません。

しかし、住宅ローンが無いならば、自宅の価値500万円がそのまま清算価値に算入されます。そのため、他には全く財産が無かったとしても、再生計画における最低弁済額は500万円となってしまいます。

そのため、住宅ローンがない場合には、個人民事再生手続によっても債務圧縮の効果があまり得られないケースが多いです。

2-2.住宅ローンの残りが少ない場合

住宅ローンがあってもその残額が少ない場合には、上記の住宅ローンがない場合と同じように清算価値の問題があります。

たとえば、自宅の価値が500万円で住宅ローンの残が200万ならば、差し引き300万円のプラスなので、この300万円が清算価値に加算されます。

この場合でも、個人民事再生手続きを利用することは可能ですが、清算価値が高額になってしまうときには手続きをするメリットが無いこともあります。

長年住宅ローンの支払いをおこなってきた、中高年の方の債務整理の場合には、住宅ローンの額がだいぶ減っていることもあります。

頑張ってローンを支払ってきたために、個人民事再生の手続きが上手くいかないというのもおかしな話ですが、法律上はそのような仕組みになっているのです。

2-3.住宅ローンがオーバーローンの状態である場合

住宅ローンが1000万円で自宅の価値が500万円だとすれば、500万円のオーバーローンなので清算価値に組み入れるべき財産にはなりません。

このようなときは、個人版の民事再生手続きをすることで、ローン支払中の自宅を維持しながら債務整理をすることができます。住宅ローンは当初の約定どおり支払うものとして、それ以外の債務については大幅な減額を受けられる場合があるのです。

たとえば、住宅ローン以外の債務が500万円だとすると、裁判所に認可された再生計画に基づきそのうちの100万円を3年間で支払うことによって、残り400万円の支払いを免除されることもあります。

住宅ローンについては、再生計画に基づく支払期間中も含めて当初の約定どおり支払うものとするのが通常ですが、その他の債務が大幅に減額されるのですから支払も楽になるはずです。