専門家(弁護士、認定司法書士)に債務整理の依頼をすると、債権者に対して受任通知を送付するのが通常です。

受任通知を受け取った貸金業者(消費者金融、クレジット会社など)は、借主(債務者)に対して直接の督促行為をおこなうことが禁止されているので、支払いが遅れている場合であっても取り立てがストップします。

そのため、裁判所へ個人民事再生や自己破産の申立てをする場合、弁護士(または認定司法書士)に依頼して受任通知を発送してもらえば、その時点で支払いを停止することが可能です。

そして、その後は債権者からの督促を受けること無しに、費用積立や申立て準備を進めていけるわけです。

ところが、一部の債権者については、弁護士等からの受任通知を受け取ってからしばらくすると、貸金請求訴訟などの裁判を起こしてくることがあります。

債権者が受任通知を受け取った場合であっても、裁判手続きによって請求をおこなうことは禁止されていませんから、正当な取立行為として訴訟を起こすことも可能であるわけです。

しかしながら、弁護士等が受任通知を送付し、裁判所へ個人民事再生や自己破産の申立てをする旨を通知しているのですから、貸金請求訴訟などの裁判手続きによっても回収できる見込みは少ないでしょう。

そして、仮に判決確定後に給与差押えがおこなわれてしまったとしたら、個人民事再生手続の利用を予定していたのが、自己破産に追い込まれてしまうかもしれません。

ほとんどの債権者が弁護士等からの受任通知によって取立行為を控えているのに、ごく一部の債権者だけが自らの権利保全のために抜け駆けのような行為をおこなうことで、自分以外の全てを害する結果となるわけです。

このように、受任通知を受け取った後でも裁判による請求をおこなってくる債権者として、大手の中ではSMBCモビットがあります。他の消費者金融やクレジット会社でも長期間にわたって和解が成立しない場合には、訴訟を提起してくることはあります。

ところが、SMBCモビットについては個人民事再生の申立てに向けて準備を進めている旨を伝えているのに、受任通知発送から3ヶ月程度で貸金請求訴訟を起こしてきた例もあります。

この場合の対策としては、早急に再生手続開始の申立てをおこない、再生手続の開始決定を出してもらえるようにするのがベストです。再生手続開始の決定があったときは、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行はすることができないからです(民事再生法39条1項)。

そうは言っても、費用の積立などに時間がかかっており、すぐに申立てをすることが出来ない場合もあるでしょう。

そのような場合には、訴状が送られてきてしまったら、とりあえずは答弁書を提出しておくことも考えられます。そうすれば、第1回口頭弁論期日で判決が出てしまうことは阻止できますから、少しでも時間の猶予が得られることになります。

いずれにせよ、給与差押えを阻止するためには、少しでも早く個人民事再生や自己破産の申立をおこなう必要がありますが、訴訟を起こされてしまったからと諦めるのではなく、出来ることをすみやかに進めていくべきです。

(19/6/10 追記)
受任通知の送付後、個人民事再生手続の申立前に、SMBCモビットから裁判(貸金請求訴訟)を起こされていた件で、申立てをおこないその旨を通知した後に訴えの取下げがありました。

再生手続の開始決定が早く出ないと、申立人(再生債務者)の給与が差押えされてしまうかもしれないと心配していました。開始決定が出れば強制執行はおこなえなくなるとしても、1度でも差押がおこなわれてしまったら勤務先との関係で問題が生じる恐れがあります。

それが、申立てをした事実を伝えただけで、再生手続きの開始決定を待たずに、訴えが取り下げられたのは嬉しい誤算です。

他の件でも、再生手続開始の申立てをおこなっただけで、債権者が訴えを取り下げてくれるとは限りませんが、少しでも早く手続きを進めていくべきであるのは間違いありません。