以前に消滅時効の援用をしたのと同じ債権回収会社から、再び督促状などが届いたとのご相談がありました。

最初に確認しておくべきは、いちど時効援用をしてそれが成功した場合、同じ債務(借金)についての請求が再びおこなわれることはないということです。

同じ債権回収会社が再度の請求をしてくることはありませんし、時効援用された後に別の債権回収会社へさらに債権譲渡するというようなこともありません。

だからといって、すでに時効援用したはずの債権回収会社から再び請求が来たとして、何かの間違いだろうと考えて放置しておくのは避けるべきでしょう。

それでは、時効援用に成功したのは間違いないはずなのに、再び同じ債権回収会社から請求が来たのは一体どういうことなのでしょうか?

まず考えられるのは、同じ債権回収会社ではあっても、別の債権についての請求がおこなわれているとの可能性です。

複数の債務についての返済が滞っていた場合に、債権譲渡を受けた債権回収会社がたまたま同じだったというわけです。

下の図を例にして解説します。この例では2017年1月にした時効援用が認められています。ところが、2019年1月に同じ債権回収会社から再び請求がありました。

原債権者(げんさいけんしゃ)とは、当初の借入先のことをいいます。2017年1月に時効援用をしたのは、原債権者であるA信販からX債権回収に対して譲渡がなされた債権についてです。この件については、時効援用が認められて一件落着しています。

ところが、その後にBクレジットからもX債権回収会社に対して債権譲渡がおこなわれました。この譲り受けた債権はすでに時効援用がおこなわれたのは別のものですから、X債権回収会社が再び請求をしてきたわけです。

この場合、原債権者がBクレジットである債務について、X債権回収会社に再び消滅時効の援用をすることが可能です。債権譲渡がおこなわれたことにより時効が中断するようなことはありません。

また、すでに時効援用したのとは別の債権についての請求を受けているのですから、相手方は同じ債権回収会社であっても、個別に消滅時効の援用をする必要があります。同じ債権回収会社だからといって、まとめて1回で時効援用するというわけにはいきません。

法務大臣の許可を受けた正規の債権回収会社(サービサー)からの督促については、架空請求などの類いである可能性はまず無いと考えて良いでしょう。身に覚えのない会社名だからといって放っておくのは避けるべきであり、早急に専門家(弁護士、認定司法書士)に相談することをお勧めします。