個人再生手続には、小規模個人再生と給与所得者等再生があります。

自営業者など給与所得者に該当しない人は小規模個人再生しか選択肢がありませんが、会社勤めの方などでは給与所得者等再生と小規模個人再生のどちらも利用することが出来る人もいます。

給与所得者等再生と小規模個人再生とは、どのように選択したらよいのでしょうか。

小規模個人再生と給与所得者等再生の選択基準(目次)
1.小規模個人再生と給与所得者等再生の割合
2.どちらの手続きを選択すべきか
3.再生計画案が否決される恐れはないのか
4.免除率により反対されることはあるのか

1.小規模個人再生と給与所得者等再生の割合

2016年の個人再生手続きの申立件数は9,602件で、このうち小規模個人再生が8,841件、給与所得者等再生が761件となっています。個人再生手続きの利用者のうち92%が小規模個人再生を選択しているということです。

これは、個人再生手続きを利用する人のうち給与所得者が8%しかいないということではありません。個人再生手続きを利用しているのは給与所得者(会社員など)が多いと思われますが、給与所得者であっても大多数が小規模個人再生を選んでいるわけです。

2.どちらの手続きを選択すべきか

給与所得者等再生を利用できる人なら、必ず小規模個人再生も利用することが出来ます。したがって、会社員などの給与所得者は小規模個人再生と給与所得者等再生のいずれかを選択して裁判所への申立てをすることになります。

給与所得者等再生では、小規模個人再生と異なり再生債権者の決議無しに裁判所により再生計画案の認可決定がなされますから、再生債権者の反対により再生計画案が否決される恐れがありません。

ただし、債権者に異議を述べる機会が設けられていない代わりに、給与所得者等再生では、計画弁済総額を可処分所得の2年分以上にしなければならないとの要件(可処分所得要件)があるのです。

たとえば、債務の額が500万円だったとすれば、個人再生手続きを利用することによって支払うべき額が100万円にまで減額される可能性があります。しかし、給与所得者等再生の場合には可処分所得要件を満たす必要があるために、支払うべき金額(計画弁済総額)が増えてしまう場合が多いのです。

そのため、給与所得者であり、給与所得者等再生が利用できる場合でも、あえて小規模個人再生を選択するケースが大多数であるわけです。

3.再生計画案が否決される恐れはないのか

上記の司法統計では個人再生手続のうち8%が給与所得者等再生となっていますが、私が申立てをおこなったものに関しては、近年は全て小規模個人再生となっています。個人再生の手続きが出来た当初は、再生計画案が否決されることを心配して、可能であれば給与所得者等再生を選択しようと考えていた時期もありました。

しかし、現在では債権者から予想外の異議が出たことにより、再生計画案が否決されるという心配はほとんどありません。そこで、異議を述べることが明らかな債権者がいて、小規模個人再生では否決されることが確実な場合などを除いては、小規模個人再生を原則として差し支えないと考えています。

再生計画案の書面決議に反対してくる債権者はごく限られています。注意が必要なのは、日本政策金融公庫など政府系の金融機関、おまとめローンとして貸付をしている債権者、信用保証協会などです。

再生計画案が否決されるのは、決議において、債権者数の半数以上、または総債権額の半分以上の債権者が反対したときです。よって、再生計画案に判定してくる可能性の高い債権者からの債務が、総債務額の半分以上を占めるような場合には、小規模個人再生を選択するのは危険かもしれません。

上記のような債権者が含まれておらず、かつ、債権者が複数であるときには、たとえ想定外の1社が反対してきた場合であっても、その債権者に対する債務が全体の半分以上を占めているので無ければ再生計画案は認可されるわけです。

4.免除率により反対されることはあるのか

再生計画案においては、各再生債権者が有する再生債権について、最大で80%の免除を受けるものとすることが出来ます。

この免除率が多く過ぎることを理由にして、再生計画案の書面決議に反対してくる債権者はいるのでしょうか。たとえば、免除率が60%であったならば反対はしなかったはずが、免除率80%の再生計画案だったために反対されるという可能性があるかということです。

免除率により賛成反対を判断する債権者が存在しないとは断定できませんが、そもそも再生計画案の書面決議に反対してこない債権者は、免除率がどうかということなど判断材料にしていないと思われます。

よって、これまでに再生計画案の書面決議に反対してきたことのある債権者を除いては、反対されないために再生計画案における計画弁済総額を増やすという必要は無いと考えられます。