消滅時効の援用は、債権者に対して内容証明郵便によりおこないます(債権者から訴訟を起こされているときには、答弁書による場合も)。ご自分で内容証明郵便を作成し、債権者に送付することによっても消滅時効援用は可能ですが、専門家に依頼するのが通常でしょう。

1.消滅時効は誰に依頼するのか

2.消滅時効援用にかかる費用

2-1.認定司法書士に依頼した場合の費用

2-2.弁護士に依頼した場合の費用

2-3.行政書士に依頼した場合の費用

1.消滅時効は誰に依頼するのか

消滅時効援用にかかる費用を比較する前に、まずは、消滅時効援用を誰に依頼するべきかについて解説します。

まず、消滅時効援用を専門家に依頼する場合、弁護士または認定司法書士に依頼するのが原則です。弁護士と認定司法書士は依頼者の代理人として消滅時効援用をすることができ、仮に消滅時効が完成していなかった場合の和解交渉も代理人となっておこなえます。

ただし、認定司法書士が消滅時効援用や和解交渉の代理人となれるのは、債務の元金が140万円以下である場合に限れられます(請求されている総額が140万円を超えていても、元金が140万円以下であれば認定司法書士が代理人となれます)。

また、消滅時効援用を業務として積極的に取り扱っている弁護士は少数だと思われます。もしも、認定司法書士と費用が変わらないのであれば弁護士に頼むのも良いでしょうが、元金140万円以下の消滅時効援用は認定司法書士に依頼するのが通常でしょう

弁護士、認定司法書士以外に、行政書士も消滅時効援用の手続きを取り扱っている場合があります。けれども、行政書士がおこなえるのは書類作成の代理人として、本人に代わり内容証明郵便を送るだけです。

内容証明郵便を送るだけで、相手方が何の連絡もしてくることなしに手続きが完了する場合には問題ないでしょうが、相手方との和解交渉やその他のやり取りを行政書士がおこなうことはできないので、何かあった場合のやりとりはすべて自分でしなければならないのです。

本人の代理人となって消滅時効援用(及び相手方との交渉)をする弁護士、認定司法書士と比べて、行政書士は書類作成の代理人に過ぎないため費用設定も安くなっているわけです。

内容証明郵便を送るだけで絶対に成功するのが分かっているケースでは行政書士に依頼しても問題無いかもしれませんが、時効援用が絶対に成功するのかを一般の方が、専門家に相談する前に判断するのは困難でしょう。

結局、消滅時効援用を専門家に依頼しようとするならば、弁護士、認定司法書士を代理人としておこなうのが大原則だといえます。

なお、弁護士、認定司法書士、行政書士以外によるホームページ以外でも、消滅時効援用の相談に乗ると書かれているものがあるようです。運営元を見ると株式会社やNPO法人などとなっていますが、そのような業者に事前に相談する必要は一切ありません

消滅時効援用のことならば、最初から弁護士や認定司法書士に相談するようにしてください。

2.消滅時効援用にかかる費用

2-1.認定司法書士に依頼した場合の費用

消滅時効援用を認定司法書士に依頼する場合の費用(司法書士報酬)は、債権者1社当たり3万円~4万円(消費税別)程度が標準だと思われます。

また、消滅時効援用が成功した場合に追加費用(成功報酬など)はかからず、もしも、時効援用が失敗したときにも和解交渉のための費用が追加でかかることは無いのが通常でしょう。

この他に実費として内容証明郵便代1,510円(電子内容証明の場合、配達証明付)がかかるので、総額だと司法書士費用32,400円(税込)と内容証明郵便代1,510円の合計33,910円程度からとなるわけです。

それ以外の費用がかかる場合があるのか、依頼する前に確認しておいた方が安心です。もしも、依頼前に費用について明確な説明が無い場合には、その事務所に頼むのは止めた方が良いでしょう。

時効援用の費用が通常と変わる場合としては、債権者から訴訟や支払督促を起こされているときです。この場合には、認定司法書士が訴訟代理人として対応することになるので、最低1万円程度の費用が加算になるのが通常でしょう。

それでも、司法書士費用は4万円~5万円(消費税別)でしょうから、訴訟や支払督促を起こされているからといって、時効援用の費用が極端に高くなることは通常ありません。また、この場合にも、成功報酬等の追加費用はかからないのが普通です。

2-2.弁護士に依頼した場合の費用

現状では、1件3万円などの(弁護士にとっては)低額な費用で、積極的に消滅時効援用を業務として取り扱っている弁護士は少ないと思われます。

もしも、認定司法書士と変わらない費用で時効援用を取り扱っている弁護士が見つかったならば、その弁護士に時効援用の手続きを依頼するのも良いでしょう。

しかし、認定司法書士が取り扱える元金140万円以下の債務についての時効援用手続きでは、弁護士でも認定司法書士でもやることは同じであり、弁護士に頼んだ方が時効援用が認められやすいということもありません。

したがって、認定司法書士よりも高い費用を払ってまで、弁護士に依頼するという必要性は通常無いはずです。

弁護士に依頼する必要があるのは、元金が140万円を超えている債務の消滅時効援用手続きをするときです。この場合に、依頼者の代理人として消滅時効援用ができるのは弁護士に限られますから、比較的低額な費用で依頼を受けてもらえる弁護士を探すのが良いでしょう。

2-3.行政書士に依頼した場合の費用

時効援用の手続きを行政書士に依頼する場合、認定司法書士や弁護士と比べて費用が低額であるのが通常です。かりに認定司法書士や弁護士の費用と変わらないのであれば、行政書士に時効援用の手続きを依頼するメリットは全く無いといえます。

認定司法書士や弁護士よりも費用が大幅に安いのであれば、内容証明郵便を送るだけで時効援用の手続きが完了するのが確実である場合にのみ、行政書士に時効援用の手続きを依頼するメリットがあるかもしれません。

けれども、先にも書いたとおり一般の方が専門家へ相談する前に、時効援用が絶対に成功するかを判断することは困難でしょう。よって、時効援用を専門家に相談しようとするならば、認定司法書士と弁護士のいずれかが選択肢となるわけです。

借金の消滅時効の援用について