自己破産とは何か?メリットとデメリット』とのタイトルの記事がありました。内容についてはリンク先の元記事をご覧いただくとして、誤りや気になる点があったのでいくつかの点について解説を加えます。

1.財産の処分について

1-1.不動産・自動車の処分

1-2.家の中にある財産の処分

2.債権者への通知の時期

3.自己破産のデメリット

4.自己破産は専門家に相談しましょう

1.財産の処分について

記事では自己破産した場合の財産の処分について書かれています。その中で、「持っている資産も生活必需品を除き、清算しなければなりません」とありますが、現実に処分しなければならない財産はごく限られます。

1-1.不動産・自動車の処分

まず、処分しなければならないものとして、自宅不動産(土地家屋、マンション)については必ず手放すことになります。これは住宅ローンの支払い中であるかどうかに限りません。

自動車については、自動車のローン支払中の場合には手放さなければならないケースが多いです。クレジット・信販会社などからの借入れで、その会社に自動車の所有権がある(所有権留保)場合には、債務整理の開始により自動車が引き上げられます。

しかし、ローンの支払いがない自動車については、初度登録から時間が経っており財産的価値があまりないような場合には、自己破産してもそのまま保有し続けられる場合が多いです。

1-2.家の中にある財産の処分

記事中には、「家中のものを全部手放さなければならない。→ 生活必需品は残すことができます。」とあります。

これを読むと、生活に必要な最低限のものを残して、それ以外のものは裁判所によって処分されてしまうのかと思ってしまうかもしれません。

けれども、個人事業を営んでおり事業用の資産が存在するような場合は別として、一般的な給与所得者の方が自己破産をしたときに、家の中にあるものを手放して、処分や精算するようなケースは通常ありません

自己破産しても、破産者が自由に管理処分できる財産のことを「自由財産」といいます(破産法34条3項)。自由財産にあたるものは、自己破産しても手放す必要はないわけです。

自由財産(破産財団に属しない財産)となる、差し押さえることができない財産に、債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具(民事執行法131条1号)があります。

ここに規定されているような生活必需品は当然として、特別に高額で財産価値があるようなものを所有している場合を除いては、家の中にあるものを処分することはありません。

そもそもの問題として、自己破産の手続きにおいて裁判所の人が家にやってきて財産の調査をするような手続きは存在しません。よって、「生活必需品とそうでないものを仕分けして、必需品と判断されなかったものは処分されてしまう」というようなことも一切おこなわれないわけです。

2.債権者への通知の時期

記事中の「自己破産の手続き」に書かれていることにも、事実と異なる点がいくつかあります。

たとえば、「債権者集会」がおこなわれるのは、破産管財人による裁判手続きがおこなわれる管財事件の場合のみです。また、裁判所によっても取り扱いが異なりますが、必ず「申立人本人が裁判所に出頭し、担当裁判官と面談する」とは限りません。

さらに、「取立がなくなる時期」として次のように書かれています。

弁護士が自己破産手続きを受任したこと、債権者(貸主)に対して自己破産申し立てしたことを、各債権者に書面で通知します。これで取り立てがなくなります。

しかし、弁護士(または、認定司法書士)は、債務整理(自己破産手続き)の依頼を受けた時点で、債権者に受任通知を発送するのが通常だと思われます。

債権者が受任通知を受け取った時点で取立はストップするので、取り立てがなくなるのは、自己破産の申立をしたときではなく、弁護士(または、認定司法書士)に手続きを依頼したときです。

3.自己破産のデメリット

自己破産のデメリットとして挙げられているものについても、現実には問題にならないことが多いです。

まず、自己破産をすると「ブラックリストに載る(信用情報に傷がつく)」といっても、このことは自己破産ではなく任意整理をした場合でも同じく生じる問題です。

不動産や自動車など高額な財産は手放さなければならない」という点については、不動産に関してはその通りですが、自動車は手放さないで済む場合も多いのは先に書いた通りです(ローン支払中でなく、財産的価値もほとんどない場合など)。

官報に名前が載る」、「制限される職業がある」のは事実ですが、このことが問題になるケースはごく一部であり、多くの場合は気にする必要がありません。

郵便物が破産管財人に転送されてしまう」、「裁判所の許可を得ないと居住地を離れられない」というのは、管財事件の場合の話です。個人の自己破産では、大多数が管財事件ではなく破産同時廃止の手続きとなりますから、このような制限はありません。

4.自己破産は専門家に相談しましょう

今回ご紹介した記事は、自己破産の「よくある誤解」について書かれているものですが、結果としてこの記事自体に多数の誤りが存在しています。この記事だけが問題なのではなく、債務整理の専門家(弁護士、司法書士)が執筆したものを除いて、ネット上に溢れている情報には間違っているものが非常に多いです。

ネット上の情報に振り回されて悩み続けるよりも、債務整理や自己破産のことは専門家に直接相談するのが解決への近道です。少しでも早く専門家のところへ相談に行き、納得できるまで質問をしてから、手続きの依頼をするようにしましょう。