自己破産申立てをする際に提出する、財産目録の「退職金請求権・退職慰労金」の疎明資料としての、「退職金見込額がわかる資料」について解説します。

裁判所によって取り扱いが異なる場合もあると思われるので、ここでの解説はあくまでも参考として捉えていただき、実際に申立てをするときには裁判所の指示に従うようにしてください。

退職金見込額がわかる資料について
1.退職金見込額がわかる資料が必要な場合
2.退職金見込額証明書を発行してもらえるのか
3.退職金支給規定の提出で足りる場合
4.退職金が存在しない場合

1.退職金見込額がわかる資料が必要な場合

正社員として会社に勤めている場合には、退職金の見込額を明らかにするため、使用者(または申立代理人)作成の退職金計算書など「退職金見込額がわかる資料」の提出が必要です。

現在の雇用形態が、契約社員、パート、アルバイトなどであって退職金が支給されないときには、退職金見込額がわかる資料は必要ありませんが、雇用契約書など勤務形態や退職金の有無が分かる書類の提出を求められるかもしれません。

2.退職金見込額証明書を発行してもらえるのか

退職金見込額がわかる資料としては、勤務先から「退職金見込額証明書」のような書類を発行して貰うのが一番ですが、普通はそのような書類を手に入れるのは難しいでしょう。

すぐに退職する予定があるわけでもないのに、退職金見込額証明書が必要になるケースなど通常は存在しないからです。

勤務先に退職金見込額証明書を出してくれといったら、普通は何に使うのかと聞かれるはずです。そのとき、自己破産や民事再生申立のために裁判所へ提出すると会社に言えるなら問題ありませんが、そうでない場合には答えに困ります。

3.退職金支給規定の提出で足りる場合

そこで、退職金見込額証明書の代わりに、「退職金支給規定」などを提出する方法があります。退職金支給についての規定がある会社ならば、退職金支給規定が備え付けてあるはずですから、そのコピーを取って裁判所に提出するわけです。

ただし、退職金支給規定のコピーを取って持ち帰るのは通常認められないでしょうから、こっそりとコピーを取って持ち出すしか無いかもしれません。それでも、退職金支給規定を勝手に持ち出したことが、裁判所を通じて会社に知られることは無いので心配は不要です。

退職金見込額がわかる資料として、「退職金支給規定」を提出するときには、その退職金支給規定により正確な退職金見込額が計算できなければなりません。

たとえば、退職金支給規定では、勤続年数と等級により退職金支給額が決まるとされているならば、勤続年数と等級が分かる資料も用意できなければならないわけです。

4.退職金が存在しない場合

個人経営の小さな会社などの場合には、退職金に関する規定が存在しなかったり、これまで退職した人に退職金が全く支給されていないということもあります。

そのような会社に勤務している場合には、財産目録には退職金が無いと記載すれば良いわけですが、裁判所からは「退職金が無いことの証明書」を提出するよう求められるかもしれません。

この場合、会社から次のような書類を作成してもらい、それを提出すれば足りるでしょう。

退職金についての証明書

氏名  ○○ ○○

 本日現在、当社の従業員である上記の者が自己都合により退職した場合、退職金を支給する予定がないことを証明します。

(所在地)
(会社名)
(代表者)            (印)

ただし、「退職金見込額証明書」と同様、「退職金が無いことの証明書」を会社に作ってもらうのは無理だという場合もあります。

そのようなときは、勤務先に退職金支給規定が存在しないことや、現実にこれまでに退職した人に退職金が支払われていないことなどの説明文書を提出することで、証明書の提出に代えられることもあるでしょう(それでも、会社に証明書を出してもらうよう、裁判所から求められる場合もあるかもしれません)。

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