Yahoo!ニュースに「離婚、病気、リストラ・・・ ローン破綻で憧れのマイホームを手放す人たち 彼らが選ぶ「任意売却」とは」とのタイトルの記事がありました。

この記事の中には、任意売却をした人の話として『売却額は、買った時の半分以下の1550万円。それでも、ローンの残りをなんとか支払うことができ、借金は残りませんでした。』との例が紹介されています。

しかしながら、不動産を売却すれば住宅ローンの残債を一括返済できるのならば、普通の不動産業者に仲介を依頼して売却すれば良いのであり、わざわざ任意売却の業者に頼む必要はありません。

任意売却によりうまくいった事例があるとしても、住宅ローンの問題全てが解決する魔法のような手段は存在しません。任意売却の業者に相談する前に、この記事を参考としてお読みください。

マイホームの任意売却で競売や自己破産を避けられるのか
1.任意売却後の残債務はどうなるのか
2.自己破産の前に任意売却するべきか
3.任意売却中の債務返済をどうするのか
4.任意売却で全てが解決するわけではない

1.任意売却後の残債務はどうなるのか

まず、任意売却をしても、その売却代金により住宅ローンを完済できない場合も多いでしょう。たとえば、任意売却により1,500万円で売却できても、住宅ローンの残りが2,000万円だったならば、残債務は500万円です。

任意売却相談のホームページなどによれば、この残債務の返済については、保証会社や債権回収会社(サービサー)と交渉することにより支払い可能な金額での分割払いが可能になるというような記述も見かけます。

実際に、債権者から月々1万円などの無理なく支払える金額での和解に応じて貰えたり、大幅な債務の減額(免除?)が可能になるケースも存在するのかもしれません。しかしながら、任意売却によることで、マイホームを手放せば問題は全て解決するとは限りません。

ホームページを見て任意売却の会社(不動産業者)に依頼したものの、結局はサービサーが和解交渉に応じてくれず、任意売却後の後に自己破産したというような例もあります。任意売却すれば自己破産を避けられると考えていたのが、結局は自己破産するしかない状況になってしまったわけです。

それであれば、業者に頼んで任意売却などせず、最初から自己破産してしまえば余計な苦労をしないで済んだかもしれません。さらにいえば、法律専門家(弁護士、司法書士)に最初から相談していれば、個人版の民事再生によりマイホームを手放さずに債務整理が出来た可能性もあります。

2.自己破産の前に任意売却するべきか

再び任意売却相談のホームページなどに書かれている話ですが、マイホーム(不動産)を所有している状態で自己破産申立てをすると、資産(不動産)を保有しているとの理由により管財手続になってしまうことがあります。

しかし、不動産が明らかにオーバーローンの状態にある場合には、不動産を保有したまま自己破産申立てをしても同時廃止になる(管財手続にならない)ことがあります。裁判所によって運用が異なる場合があるものの、不動産が1.5倍以上のオーバーローンであれば同時廃止になるのが通常だと思われます。

不動産が1,000万円で、住宅ローンの残債務が2,000万円ならば、2.0倍のオーバーローンです。このような場合には、任意売却などにより不動産を処分することなしに自己破産申立てをしても同時廃止になるということです。よって、多額の裁判所費用(予納金)がかかるようなこともありません。

それでも、任意売却によれば売却代金の中から引越費用を支払ってもらえる場合があるというような話もありますが、それもあくまでも交渉次第のお話しです。不動産が大幅なオーバーローンの状態にあるような場合に任意売却をしたとして、引越費用を受け取れる可能性がどれだけあるのかは疑問です。

3.任意売却中の債務返済をどうするのか

マイホームを手放すとか、自己破産することを考えるという状況であれば、住宅ローン以外の債務支払いにも追われているのが通常だと思われます。そのような状況下で、任意売却の仲介業者に自分で依頼して手続きを進めていくのは相当に大変なことであるはずです。

任意売却が完了するまでの期間、住宅ローン以外の債務支払いをどうするかというのも大きな問題です。自己破産することを前提に、その前に任意売却をするとして、更に借入をすることにより返済をしたとすれば、自己破産の手続きで問題が生じる恐れもあります。

任意売却をしてから自己破産申立てをすると決めた時点で、住宅ローン以外の債務支払いも停止することも考えられますが、自分自身で債権者への対応をしていくのは困難だと思われます。

これに対し、事前に任意売却をせず、ただちに弁護士や司法書士に依頼して自己破産申立てをするとします。この場合には弁護士(または、認定司法書士)が債権者に受任通知を発送した時点で債務の支払いを停止しますが、債権者との対応を自分でする必要はありません。

4.任意売却で全てが解決するわけではない

任意売却をすれば住宅ローンを完済できる、もしくは、残債務が僅かとなるような場合などでは、任意売却をしてマイホームを手放せばすぐに生活再建が可能となることもあるでしょう。しかし、不動産が明らかにオーバーローンの状態であり、他にも多数の債務があるようなケースでは、最初に任意売却をするとの選択肢は適切でないかもしれません。

そこで、任意売却を考えているとしても、1つの不動産業者だけに相談して手続きをしてしまうのではなく、法律専門家である弁護士や司法書士にまずは相談することをお勧めします。任意売却の業者(不動産会社)は不動産を売却するのが商売ですから、それ以外の選択肢は存在しないのです。法律専門家に相談したうえで、どのような手段が最も良いのかを検討するべきでしょう。