住宅ローンの支払いが苦しい。また、住宅ローンの支払いのために、他にも借金を抱えてしまったという方からの相談を多くいただきます。しかし、住宅ローンの状況を確認してみると、まだ支払い開始から5年とか10年しか経っておらず、明らかなオーバーローンの状態にある場合も多いです。

そのようなときであっても、個人版民事再生の利用が可能ならば無理なく支払いが可能になるかもしれません。また、住宅ローンの支払方法を変更してもらうことも検討すべきです。それらの方法によっても住宅ローンの支払いが厳しいという場合、今の自分にとって住宅を守るということがどれだけ重要なのかを考えてみることも必要かもしれません。

住宅を手放さずに債務整理が可能か(目次)
1.住宅ローンの返済は可能である場合
2.住宅ローンそのものの返済が苦しい場合
3.住宅を守ることが本当に最優先なのか
4.日本の人口は減り、住宅の価格は下がる

1.住宅ローンの返済は可能である場合

住宅ローンそのものの返済については収入の範囲内で十分に可能であるが、住宅ローン以外の借金があるために返済が苦しくなっている。

住宅ローン以外の借金は、銀行、クレジットカード、消費者金融などからの債務(ローン、キャッシング、ショッピングリボなど)だとします。

この場合、個人版民事再生の手続きを利用することにより、住宅ローン以外の債務を大幅に圧縮できる可能性があります。

具体的には、個人版民事再生によれば住宅ローン以外の債務を最大で80%減額することが出来るので、現在の債務額が500万円だったとすれば、それを100万円に減らすことが可能かもしれません。

この100万円を3年間で支払うと残りの400万円の支払いは免除されるのです。個人版民事再生によっても、住宅ローンは利息元金を含めて当初の契約通りに支払うのが通常ですが、トータルで考えれば大幅に返済は楽になるはずです。

このように、住宅ローンの支払いは問題無いものの、何らかの事情で別に借金をしてしまい、その支払いが困難であるというような場合には個人版民事再生が非常に有効です。

なお、住宅ローンの支払いが遅れてしまっていたり、さらには、保証会社による代位弁済がおこなわれてしまった場合であっても、個人版民事再生を利用することで住宅を維持しつつ債務整理がこともあります。

しかし、法律の設計としては、上記のような場合でも利用可能であっても、現実には支払い可能な再生計画を立てるのが困難なことが多いと思われます。

よって、可能な限り住宅ローンの支払いが遅れてしまう前に、専門家(弁護士、司法書士)に相談して個人版民事再生の利用を検討すべきです。

2.住宅ローンそのものの返済が苦しい場合

他に大きな借金があるわけでなくとも、収入に対して住宅ローン返済額が多すぎて支払いが困難であるという場合には、住宅ローンの支払方法を変更してもらうことが考えられます。

たとえば、住宅金融支援機構(旧 住宅金融公庫)から住宅ローンの借入れをしている場合、『住宅金融支援機構では、融資のご返済でお困りのお客さまに、返済方法の変更メニューをご用意しております』として、次のような返済方法のメニューが掲げられています。

月々の返済でお困りになったとき(住宅金融支援機構)

  1. 経済事情や病気等で収入が減少し、返済が大変になった → Aタイプ 返済期間の延長(最長15年)
  2. しばらくの間、返済額を減らして返済したい → Bタイプ 一定期間、返済額を減額
  3. ボーナス返済が負担になっている → Cタイプ ボーナス返済の変更

銀行や、その他の金融期間から住宅ローンの借入れをしている場合であっても、支払方法変更の相談に乗って貰えるはずですので、支払いが遅れてしまう前に相談してみることをお薦めします。

返済方法の変更が出来るといっても、どんな場合であっても、それによって住宅ローンの支払いが可能になるわけではありません。

たとえば、リストラなどによる転職によって収入が半減してしまったとすれば、月々の支払額が少し減ったくらいでは支払い可能にはならないでしょう。この場合、住宅ローンの支払月額を半分にして欲しいといってもそれは無理であるはずです。

住宅金融支援機構のホームページにも支払方法法の変更については次のような注意書きがあります。

返済方法変更のご利用に当たっては返済方法変更中及び変更期間終了後についてご返済の継続が可能であることを確認させていただきます。審査の結果、お客さまのご希望に添えない場合もありますので、あらかじめご了承ください。

したがって、住宅ローンの支払方法変更によっても支払い可能にならないのであれば、住宅を手放すことも考えざるを得ません。

3.住宅を守ることが本当に最優先なのか

住宅ローンの支払いで苦しんでいるという場合、住宅を売却してもローンが残ってしまう、いわゆるオーバーローンの状態にあるケースが多いと思われます。

住宅を売却すればローンを完済できるのであれば、今の持ち家は手放して他の家に住み替えることも選択肢となるでしょう。

しかし、オーバーローンの状態にあるならば、仮に住宅を任意売却しても債務が残ってしまうわけです。この場合、すぐに再び住宅を購入するのは無理でしょうし、住宅ローン残債務の支払いができず、結局は債務整理するという結果にもなりかねません。

最初の「1.住宅ローンの返済は可能である場合」で解説したように、個人版民事再生により問題なく住宅ローンの支払いができるならばそれがベストであるとして、住宅ローンそのものの返済が苦しい場合には、住宅を手放す決断をすることも必要かもしれません。

住宅ローンを組んで5年とか10年しか経っておらず、オーバーローンの状態にある住宅が、果たして自分のもの(マイホーム)といえるのかを冷静に考えてみるべきです。

何とか頑張って支払いができるようにしたとして、残りの20年とか30年とかいう期間を本当に支払っていけるのか。そして、そこまで支払っていきたいと思えるほど、そのマイホームは大切なものなのか。

先祖代々が住み続けてきた土地家屋を守るというなら、自分の代で手放すのが難しいというのは分かります。

しかし、もともと自分にとっては分不相応な買い物をしてしまったとか、住宅ローンを組んだ後に状況が変わったというならば、手放す勇気を持つべきときもあります。

せっかく買ったマイホームを手放したくないとか、近所の目が気になるとか、理由は色々あるでしょう。それでも、無理を続けていけば更によくない結果を招くことだってあるのです。

家族と相談し協力し合って生活していくことの方が、無理やり家を守っていくことよりも大切なはずです。

4.日本の人口は減り、住宅の価格は下がる

これからの日本では、今まで人類が経験したことのないスピードで人口が減っていきます。

日本人は「人口減少」の深刻さをわかってない(東洋経済オンライン)
今年3月30日、国立社会保障・人口問題研究所が衝撃のデータを発表した。2030年にはすべての都道府県で人口が減少し、2045年までに日本の総人口は1億0642万人になると予想している。2015年の総人口が1億2709万人だったから、今後30年で2000万人以上減少することになる。とりわけ、ひどい落ち込み方をするのは都市部より地方で3割減が当たり前と見込まれている。

2045年というと随分先のようにも思えますが、ほんの27年くらい先のことです。今組んでいる住宅ローンの最終支払いが20年以上先なっている方も多いのではないでしょうか。

人口が大幅に減っているわけですから、都市部の駅近物件などを除けば大幅に価格が下落しているのは間違いありません。

あと、20年も30年も苦しみながら住宅ローンを支払いきったとして、残されるのは新築から30年以上も経った古い家です。残酷な言い方をすれば、そんな家はタダみたいな値段で買うことができるでしょう。

「歳を取ると家を借りることができなくなるから、持ち家じゃないと老後に困る」という意見もあります。

しかし、先ほど紹介した記事によれば『65歳以上の人口比率は東京都や神奈川県といった首都圏でさえも、現在の高齢者数に比べて1.3倍に増える』とあります。

「人口が2割減る」のに、「高齢者数が1.3倍」になるということは、つまり高齢者だらけになるわけです。そんな高齢者だらけの日本で、高齢者には家を貸さないなどといっていたら貸す相手がいません。

人口減少を他人ごとだとか、遠い未来のことだと思うべきではありません。そしてこのことは、今抱えている住宅ローンを本当に、後20,30年と支払っていくべきかの判断にも重要な影響があるはずなのです。

繰り返しになりますが、現時点でオーバローンの状態にあって売れないような住宅は30年後には無価値です。これから日本は大きく変わります、親の世代や昔の人が言っている話を聞いても意味がないのです。

債務整理の相談室