労働者福祉中央協議会が2016年5月18日に公開したアンケートから見えてきた奨学金問題から、現在の日本における奨学金の実情が分かります。

日本の奨学金は、ほとんどが貸与型なので返還の必要がある。奨学金の借入総額は平均312.9万円、月々の返還額は平均17,206円、返還期間は平均で14.1年となっている。34歳以下では2人に1人が奨学金を利用し、その6割が有利子奨学金である。

大学などを卒業して社会に出る時点で、平均300万円を超える借金を抱えているわけです。高収入が得られる大企業などに就職できた人は別として、社会人になったばかりだと生活費にはそもそも余裕が無いのが通常です。

上記アンケートによれば、正社員として就職しなかった非正規労働者では、4人に1人が延滞を経験しているとのことです。300万円もの借金をして大学へ行ったのに、奨学金の返済を出来るだけの収入が得られない人が大勢いるわけです。

今から奨学金を借りて大学に入ろうとしている人、また、奨学金を利用して子供を大学に通わせようとしている親は、上記の事実をしっかりと認識するべきです。奨学金という名は付いていても、名目が学校に通うためだというだけで単なる借金と何ら変わりは無いのです。

2人に1人が奨学金を利用しているということは、現在のようにほとんど誰でも借りられる奨学金の制度が無くなったとすれば、大学進学率が大幅に低下することも考えられます。そうなれば、経営が悪化する大学が一気に増えるわけですから、学生に奨学金という名の借金をさせてでも大学に入って貰わないと困るわけです。

これが日本学生支援機構による奨学金の現状だと言っていいでしょう。住宅ローン、自動車ローンのように、大学ローンとでもすれば借金だと認識しやすいのでしょうが、奨学金と名を変えると何となく思考が停止してしまう。

自己破産の返済が出来ない場合

既に奨学金を利用してしまっていて、その返済に困っている場合、日本学生支援機構には減額返還、返還期限猶予などの制度があります。

しかし、どちらであっても返還予定総額が減額されるわけではありませんから、一時的に返済が苦しいといったときには助かりますが、結局は奨学金の返済から逃れられるものではありません。

奨学金の返済や生活費のために、他からも借金してしまっている場合、自己破産などの債務整理が必要となることもあります。奨学金も借金の1つですから、自己破産をして免責許可が得られれば、支い義務は免除されます。

ただし、奨学金を利用する際に、連帯保証人(および保証人)を付けているケースが多いと思われます。この場合、借入れをした本人が自己破産をしても、連帯保証人(および保証人)の支払い義務は無くなりません。

もしも、連帯保証人等についても支払いが不可能な場合には、連帯保証人等も自己破産などの債務整理手続きをおこなうことになります。奨学金の支払いが困難なために自己破産をしようとする際は、連帯保証人等への影響も考えてから判断をするべきです。

どのような方法を選択するのがベストなのかは、債務整理に詳しい弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。