任意整理の和解契約書には、期限の利益の喪失に関する条項が定められているのが通常です。たとえば、次のような具合です。

第○条 乙が、第○項の弁済を2回分怠ったときは当然に期限の利益を喪失し、残元金に対して、期限の利益喪失日の翌日から支払済みまで年○%の割合による損害金を附加して直ちに弁済するものとする。

このような定めがあるとき、どのような場合に期限の利益を喪失するのか、また、その場合に支払うべき金額はどうやって計算するのかについて解説します。

ただし、2回分の遅れが生じたことにより契約上は期限の利益を喪失しても、そのまま支払いを継続すれば特段の問題が生じない場合も多いです(詳しくは、任意整理で今月分が払えないときをお読みください)。

よって、ここではあくまでも契約書にしたがって支払いをしようとする場合、期限の利益の喪失に関する条項をどう考えるかを解説するものです。

期限の利益の喪失とは(目次)
1.期限の利益を喪失する場合
2.遅れが2回分以上になった場合
3.遅れを解消した場合

1.期限の利益を喪失する場合

下記の例では、和解総額30万円、月々の支払額は1万円、平成30年1月から毎月末日払いで和解しています。

期限の利益を喪失するケース

和解契約成立後に、平成30年1,2,3月はそれぞれ末日までに10,000円の支払いをおこないましたが、4,5月と2ヶ月続けて支払いができませんでした。この場合、5月末日の経過により期限の利益を喪失します。

そこで、残元金の270,000円に対して、期限の利益喪失日の翌日である6月1日から支払日までの遅延損害金を付加して支払う必要があることになります。

2.遅れが2回分以上になった場合

下記の例では、4月の支払ができなかったものの、5月の支払いは約定どおりおこなっています。しかし、6月に再び支払いができなかったことにより、遅れが2回分となってしまいました。

この場合には、6月末日の経過により期限の利益を喪失します。そのため、その翌日である7月1日から支払日までの遅延損害金を付加して支払う必要があります。

期限の利益の喪失(2回分遅れ)

3.遅れを解消した場合

下記の例では、4月の支払いはできなかったものの、5月に2回分を支払ったことにより遅れを解消しています。そして、6月には再び支払いができませんでしたが、支払いの遅れは1回分のみなので期限の利益は喪失しないことになります。

遅れを解消している場合

4月と6月の2回分の支払いができなかったものの、5月の時点でいったん遅れを解消しているので、「弁済を2回分怠った」ことにはなりません。よって、期限の利益を喪失することはないわけです。

つまり、約定どおりの支払いができない月が何回あったとしても、遅れが2回分以上にならなければ期限の利益を喪失しないということです。そこで、7月末日までに1回分を支払えば、その後も期限の利益を喪失することなしに支払っていくことができます。

ただし、1か月分が遅れている状態になっているわけですから、債権者から督促を受けることもあるでしょうし、早めに延滞を解消した方が良いのは当然のことです。