破産法34条1項では、「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない)は破産財団とする」としています。そして、同条3項において「次に掲げる財産は、破産財団に属しない」とされています。これが、自由財産です。

「自由財産」とは、破産者の財産のうちで破産財団に属さず、破産者が自由に管理処分できる財産のことをいいます。法律上当然に自由財産になるものとされているのは次のような財産です。

1.99万円までの現金(破産法34条3項1号)

破産法34条3項1号では、「民事執行法第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭」と定められています。そして、民事執行法第131条第3号には、「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額」とあります。

上記の政令とは民事執行法施行令であり、次のとおり「政令で定める額は66万円とする」とされています。

(差押えが禁止される金銭の額)
第1条 民事執行法(以下「法」という。)第131条第3号(法第192条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、66万円とする。

この金額に2分の3を乗じた額の金銭が自由財産だということですから、33万円×3/2=99万円が自由財産となります。ここでいう金銭は現金に限られ、預貯金は含まれません。

2.差押禁止財産(破産法34条3項2号)

破産法34条3項2号により、「差し押さえることができない財産」(差押禁止財産)も自由財産とされています。

差押禁止財産は、民事執行法131条により次のように定められています。

なお、破産法34条3項2号の規定では、「差し押さえることができない財産(民事執行法第131条第3号に規定する金銭を除く)」とされています。これは、破産法34条3項1号において、「民事執行法第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭」が自由財産とされているからです。

民事執行法第131条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

1 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具

2 債務者等の1月間の生活に必要な食料及び燃料

3 標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭

4 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物

5 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物

6 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前2号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)

7 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの

8 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物

9 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類

10 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物

11 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具

12 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの

13 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物

14 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

3.預貯金の取り扱い(自由財産の拡張)

上記の自由財産である「99万円までの現金」および「差押禁止財産」は、すべての破産者について当てはまるものですが、その他の財産については自由財産として一切認められないということではありません。

裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後1月を経過する日までの間、破産者の申立てによりまたは職権で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することが決定できます(破産法34条4項)。

預貯金については、99万円までの現金と異なり本来的な自由財産であるとはされていません。そこで、預貯金については自由財産拡張の対象とされ、保険解約返戻金等とともに自由財産の拡張を認められる財産であるとされています。

また、預貯金がある場合、いつでも自由財産の拡張が必要となるというわけではありません。裁判所により基準がありますが、たとえば東京地方裁判所では「残高が20万円以下の預貯金(複数ある場合は合計額)」については「換価しない財産」であるとされ、自由財産拡張の裁判があったものとみなされます。

つまり、合計で20万円以下の預貯金については自由財産拡張申立をしなくとも、当然に自由財産拡張の裁判があったものとして取り扱れるわけです。