お金を貸している人(債権者)、お金を借りている人(債務者)のどちらから、返済の最中に死亡してしまった場合、その借金の返済はどうなるのでしょうか。

また、債権者が会社(法人)の場合、その会社が倒産した場合に、保有していた債権がどうなるのかという問題もあります。

借金も相続されます(目次)
1.債務者(借り主)が死亡した場合
2.債権者(貸し主)が死亡した場合

1.債務者(借り主)が死亡した場合

たとえば、夫が借金を抱えたまま死亡したとします。その場合、借金の支払い義務も死亡により消滅するのでしょうか。

結論からいえば、借り主が死亡しても借金は消滅しません。亡くなった方の借金は、その方の相続人が支払い義務を引き継ぐことになります。

たとえば、亡くなった方に妻と子がいた場合、相続人である妻と子が借金を相続します。子が未成年だったとしても、借金を相続することに変わりありません。

父が借金を抱えたまま死亡したことで、生まれたばかりの子どもが多額の借金を抱えるという事態もあり得るわけです。

もし、亡くなった方の財産(遺産)より、借金(債務)の方が多い場合には、家庭裁判所で相続放棄の手続をすることで、借金の支払い義務から逃れることができます。

ただし、相続放棄をした方は、はじめから相続人でなかったとみなされるので、遺産についても一切引き継ぐことができません。たとえば、被相続人の預金を下ろして使ってしまったような場合、後になって相続放棄することは認められないので要注意です。

相続放棄をする人が未成年者の場合には、法定代理人である親権者が相続放棄の手続きをおこないます。親の死亡により親権者がいなくなったときには、家庭裁判所に未成年後見人を選任してもらったうえで、相続放棄をおこないます。

2.債権者(貸し主)が死亡した場合

お金を貸していた人(債権者)が全額の返済を受ける前に死亡した場合、その債権は、死亡した債権者の相続人へ引き継がれます。

つまり、貸し主が死亡したからといって、債権が消滅して返済義務が消えてしまうわけでは無いのです。債務者としては、債権者の相続人からの請求に応じて返済をしなければなりません。

また、債権者(貸し主)が法人(会社)の場合も、貸し主である会社が倒産したからといって、そのまま借金の返済義務が消滅してしまうことはありません。

まず、債権者が会社更生法、民事再生法といった再建型の倒産手続きをした場合、その会社は営業活動を継続するわけですから、支払いもそのまま継続しておこなっていくことになります。

一方、債権者が破産した場合には、その会社は清算されて最終的には消滅します。この場合、その破産した会社がもっている財産は全て換価されますから、貸付債権については他の会社に売却されることになるでしょう。そうなれば、今度は売却先の会社に返済をしていくことになります。

もっとも、消費者金融が破産するような状況であれば、もっと早い段階で貸付債権を売却し、債権譲渡をすることも多いと思われます。この場合には、債権譲渡を受けた会社がその後の債権者となります。

なお、債権譲渡をするには、債権の譲渡人から債務者に対して債権譲渡の通知がおこなわれます。その後は、新たな債権者に対して返済をしていくことになりますが、通知の内容等に不明点がある場合には、返済を開始する前に専門家(弁護士、認定司法書士)に相談するのがよいでしょう。

偽物の債権譲渡通知が届くというようなことは滅多に無いと思われますが、もしも、偽の通知にしたがって支払いをしてしまったとしても、元々の債務は消滅しませんから二重に支払いしなければならない事態も考えられます。

結論としては、債権者、債務者のいずれかが、死亡や倒産によって消滅したとしても、それによって借金の支払い義務が消えることは無いと考えるべきです。

よって、多額の借金を抱えた人が死亡したというようなときには、相続放棄をする必要があるかもしれません。相続放棄の手続きは死亡の時から3ヶ月以内におこなうのが原則ですから、早急に専門家(弁護士、司法書士)に相談するようにしましょう。