個人民事再生の手続きにおいては、再生計画の履行可能性があるかが非常に重要視されます。

たとえば、100万円を3年間で支払うとの再生計画であれば、月々の弁済額は約27800円(1,000,000円÷36回=27,778円)となりますが、この約27,800円を3年間にわたって実際に支払える可能性がなければならないということです。

これは民事再生法で、「再生計画が遂行される見込みがないとき」には、裁判所は再生計画不認可の決定をするとされているからです。

再生計画の履行可能性
1.履行可能性の判断について
2.再生計画の履行テストとは

1.履行可能性の判断について

実際の裁判所の手続きでは、再生計画が遂行される見込みがある、つまり、「再生計画の履行可能性がある」だけでは足りないと思われます。裁判所や担当する裁判官によっても異なるでしょうが、突発的な病気や怪我、リストラなどの予期せぬ事情がない限りは「再生計画をほぼ間違いなく履行できる」と認めてもらえる必要があるかもしれません。

司法書士である私が書類作成をおこなった個人民事再生の手続きにおいても、再生計画の履行可能性について何度も説明を求められたことが最近ありました。現実の家計収支からしても、履行可能性は十分に高いと考えられる事例であり、再生委員(弁護士)も困惑するような状況でした。

何度か文書による説明をした後に、最終的には今後の収支予定の家計票を提出することで何とか認めてもらえたのですが、これだけ厳しいと「再生計画の履行が何とか可能だろう」という程度の家計収支では、個人再生手続きの利用が難しいのではと思った次第です。

もちろん、このときが特に厳しかったのかもしれませんが、再生計画の履行可能性について非常に厳しい見方をされる可能性があることも頭に置いておくべきでしょう。

2.再生計画の履行テストとは

再生計画が現実に履行できるかどうかについて、最終的には再生計画に基づく弁済を実際に行ってみなければ分からないわけですが、裁判所としては申立時に提出した資料や家計票だけにより判断するのではなく、他にももっと判断材料が欲しいと考えます。

そこで行われるのが「履行テスト」です。個人再生手続の開始決定が出たら、その時点で予定している再生計画案に基づいて、毎月の弁済額に相当する金額の積立をおこなうことで、現実に再生計画を履行できるかのテストを行うわけです。

たとえば、月々の計画弁済額が28,000円ならば、債権者への振込手数料も考慮して月額30,000円の積立を行ってみるというような具合です。積立は再生手続の開始決定が出た月に開始し、再生計画の認可決定が出るまで(または、6ヶ月間などの期間を定めて)継続します。

3万円を6ヶ月ならば合計18万円の積立をすることになります。積立は再生委員が用意する銀行口座に振り込むか、または、申立人自身の銀行口座へ行う場合もあるでしょうが、その場合でも途中で引き出すのは厳禁です。

現実に履行テストをやり遂げることで、裁判所としては履行可能性があるとの判断ができるわけです。そのため、途中で一時的であってもお金を引き出してしまったりすれば、履行可能性がないと判断されても仕方ないことになります。

そして、積み立てたお金は再生委員の報酬に充てられるか、または、すでに再生委員の報酬を支払い済みの場合には全額が返金されます。いずれにしても、履行テストのために積み立てたお金が無駄になってしまうことはありません。