2018年3月2日付、NEWSポストセブンに「奨学金に絡む自己破産者は15000人以上 増加傾向にあり」との記事がありました。

昨今、学生時代の奨学金の返済ができずに破産する人が激増している。JASSO(日本学生支援機構)によれば、返済の滞納が3か月以上続く人は、16万人(2016年度末時点)。「今後決められた月額を返還できる」と回答した人は3割強しかいなかった。奨学金に絡む自己破産者は、2016年までの5年間で1万5338人。内訳は本人が8108人、保証人が計7230人。2016年度は過去最高の3451人が破産した。

当ブログの先日の記事(奨学金が返せず自己破産する場合)にある通り、労働者福祉中央協議会が2016年5月18日に公開した調査結果によれば、『奨学金の借入総額は平均312.9万円、月々の返還額は平均17,206円、返還期間は平均で14.1年』となっています。

正社員として働き十分な収入を得られているならばまだしも、派遣やアルバイトなど非正規で働いている人の場合には、仮に借金が無かったとしてもギリギリの生活を強いられている人も多いはずです。

そのような状況で、月に2万円近くの奨学金の返済が大きな負担になるのは当然のことです。この記事にある女性は、東京の有名私立大学を卒業しアパレル業界に就職したものの、ブラック企業であることなどに耐えられず2年ほどで退職。その後は、派遣やアルバイトで生活しているとのことです。

収入が少ないことなどにより返済が困難な場合のために、奨学金には返済猶予の制度もあります。しかし、このような状況では、たとえ一時的に奨学金の返済猶予を受けられたとしても、その後に返済できるようになるかは疑問です。

奨学金の返済猶予について

奨学金には「奨学生本人に返還困難な事情があるときに、願い出によって、一定期間返還期限を先延ばしする」一般猶予の制度があります。一般猶予の申請事由には、傷病、入学準備中、失業中、経済困難などがありますが、たとえば、経済困難は「無職・未就職・低収入により返還困難な方」が対象となっています。

そして、経済困難の収入(所得)基準は、給与所得者の場合には「年間収入金額(税込)が300万円以下」となっています。この基準自体が、一般的な給与水準をだいぶ高く見ているようであり、奨学金の返済を困難に感じる人のほとんどが当てはまるでしょう。しかし、猶予期間は10年間が限度なので、この期限が切れればやはり返済をしなければなりません。

大学を卒業して就職したものの、月2万円程度の奨学金返済が困難で返済猶予の申請をした人が、10年後には奨学金の返済をするのに十分な収入を得られるようになっている可能性はあまり高くないかもしれません。現実には、生活費の不足によりカードローンなどを利用している場合も多いでしょう。

そうであれば、奨学金についての10年間の猶予期限終了とともに資金繰りに窮することになるのは目に見えています。奨学金を利用する際は親を連帯保証人にしているケースが多いですから、借入をした奨学生本人が自己破産をしても連帯保証人である親の返済義務は残ります。

借り主本人だけが自己破産をすればそれで済むならばまだしも、連帯保証人と保証人まで付けて貸付をしているのでは、親に迷惑をかけられないと自己破産を躊躇するケースも多いでしょう。本人、連帯保証人、保証人の全員に支払い能力が無いとすれば、3人とも自己破産しなければ支払い義務は消滅しないわけです。

奨学金の返済ができずに自己破産する人が増えている件については、これからもさらに社会問題化していくのは避けられないでしょう。