被相続人が、第三者の債務についての連帯保証人となっていた場合、その相続人は、相続放棄をすることにより被相続人が負っていた連帯保証人としての責任から逃れることができます。

相続人が、被相続人の債務についての連帯保証人になっている場合、その相続人は、相続放棄をしても連帯保証人としての責任から逃れることはできません。

相続放棄と連帯保証の関係(目次)
1.連帯保証人(保証契約)とはなにか
2.相続放棄と連帯保証人の関係
2-1.被相続人が、第三者の連帯保証人になっていた場合
2-2.相続人が、被相続人の連帯保証人になっていた場合

1.連帯保証人(保証契約)とはなにか

借金をするときには、債権者(貸し主)と債務者(借り主)との間で、金銭の貸し付けについての契約が成立することとなります。

この契約のことを、金銭消費貸借契約(きんせんしょうひたいしゃくけいやく)といいます。金銭消費貸借の当事者となるのは、債権者(貸し主)と、債務者(借り主)のみです。

また、この金銭消費貸借契約についての連帯保証人をつける場合、債権者と、連帯保証人との間で、債務の保証についての契約を結びます。この契約のことを保証契約(ほしょうけいやく)といいます。

ここで注意すべきなの、保証契約は債権者と保証人との間で締結される契約であり、債権者と債務者との間で締結される金銭消費貸借契約とは別の契約であるということです。

金銭消費貸借契約と保証契約とは別々の契約なのですから、それぞれが個別に相続の対象となるわけです。この点を踏まえて考えると、相続放棄と連帯保証人の関係がわかりやすくなります。

なお、保証人になるというときには、多くの場合で連帯保証契約となっていますから、以下は連帯保証人と書きます(保証契約でも連帯保証契約でも、ここで説明する相続に関しては同様に考えて差し支えありません)。

2.相続放棄と連帯保証人の関係

被相続人が第三者の連帯保証人になっていた場合と、相続人が被相続人の連帯保証人になっていた場合とでは結論が全く異なります。それぞれついて解説しますので混同しないようにお気を付けください。

2-1.被相続人が、第三者の連帯保証人になっていた場合

被相続人が第三者の連帯保証人になっていた場合、相続人に引き継がれるのは、債権者と被相続人との間で結ばれた連帯保証契約に基づく連帯保証人としての義務です。

相続人が相続放棄の手続きをすれば、被相続人が負っていた一切の義務を引き継がないこととなりますから、被相続人が負っていた連帯保証人としての借金の支払い義務からも逃れることができます。

なお、被相続人が誰かの連帯保証人になっていても、それをご家族に知らせていないこともあるでしょう。この場合、相続開始から長い期間が経過した後になって、債権者から督促が来たことで連帯保証債務の存在が発覚することもあります。

このようなときには、連帯保証債務の存在を知ってから3ヶ月以内であれば相続放棄ができることもあります。ただし、すでに相続財産の処分行為をおこなってしまっている場合などには、相続放棄をするのが困難な場合もあります。

連帯保証債務の存在を知ったことをきっかけとして相続放棄をする場合、相続放棄できる可能性があるのは連帯保証債務の存在を知った時から3ヶ月以内です。

被相続人の死亡から3ヶ月が経過しており、更に連帯保証債務の存在を知った時からも3ヶ月が経過してしまえば、それから相続放棄するのは不可能だと考えられるのでご注意ください。

ご自身の場合に相続放棄が可能であるかについては、相続放棄の手続きに精通した専門家(弁護士、司法書士)へ早急に相談するのがよいでしょう。

2-2.相続人が、被相続人の連帯保証人になっていた場合

相続人が、被相続人の債務についての連帯保証人になっていた場合、相続人に引き継がれるのは、債権者と被相続人との間で結ばれた金銭消費貸借契約に基づく債務者としての義務です。

そこで、相続人は、相続放棄手続きをすることによって、被相続人が負っていた債務者としての義務を引き継がないものとすることは可能です。

ところが、相続人が被相続人の連帯保証人になっていた場合、上記の相続債務とは別に、債権者と相続人自身の間で結ばれた連帯保証契約に基づく連帯保証人としての義務があります。

この連帯保証人としての義務は、相続とは関係無しに、相続人自身がそもそも負担していたものです。したがって、相続放棄をしたとしても、連帯保証契約に基づく連帯保証人としての義務には何の影響も無いのは当然です。

借り主(主債務者)である被相続人が死亡してしまった場合、その相続人が相続放棄したとすれば、債務の支払い義務があるのは連帯保証人のみであることになります。もしも、支払いが出来ないならば、その相続人自身が債務整理(自己破産など)をしなければならないこともあるでしょう。