主債務者が自己破産し免責を受けても保証人の保証債務は消滅しません。また、主債務者が債務整理を開始し、代理人(弁護士、認定司法書士)が貸金業者に受任通知を送付しても、保証人に対する督促行為が禁止されるわけではありません。

保証人に迷惑をかけずに自己破産できるか(目次)
1.主債務者についての免責許可の効力
2.保証人は誰に相談すればよいのか
3.保証人に迷惑をかけない方法はないのか

1.主債務者についての免責許可の効力

免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさないとされています(破産法253条2項)。

つまり、主債務者が自己破産することにより免責許可の決定を受けても、保証人の保証債務には影響がないので、保証債務は消滅しないということになります。

したがって、債権者としては、免責許可を受けた主債務者に請求することはできなくなりますから、保証人に対して保証債務の履行を請求することになるでしょう。そして、保証人としては債権者からの請求を拒否することはできません。

そのため、保証人にも資力がなくて保証債務の履行が困難な場合には、保証人自身も債務整理(任意整理、個人民事再生、自己破産)の手続きをするしかありません。

なお、保証人が、債権者に対して支払いをした(保証債務を履行した)場合、保証人は主債務者に対して求償権を取得しますが、この求償権も破産債権であるために免責されてしまうので、破産配当の限りでしか回収は期待できません。

2.保証人は誰に相談すればよいのか

主債務者が、弁護士(または、認定司法書士)に債務整理の手続きを依頼し、弁護士等から債権者である貸金業者に対して受任通知を送付した場合、その貸金業者が債務者に対して取立行為をおこなうことは禁止されます。

ところが、主債務者が債務整理を開始したとしても、それによって保証人に対する取立行為が禁止されるわけではありません。そこで、主債務者が自己破産申立をするとなれば、保証人に対しての取立が開始されることとなるかもしれません。

そこで、保証人も保証債務についての債務整理をしたいのであれば、保証人自身が弁護士(または、認定司法書士)に依頼することになります。

保証人が債務整理依頼する場合、原則として主債務者とは別の弁護士等に依頼します。主債務者と保証人とは、利害関係が相反している関係にあるからです。

3.保証人に迷惑をかけない方法はないのか

多額の借金を抱えて自己破産するしか選択肢が無いような状況になってしまったときに、保証人に迷惑をかけることなしに破産する方法は存在しないと考えるべきです。

保証人に迷惑をかけないためには、主債務者である自分自身が当初の契約通りの返済をするしかありません。それができないのであれば、保証人に迷惑をかけないというわけにはいきません。

保証人になってもらった時点で、自分が支払いをできなくなったとしたら、保証人に必ず迷惑をかけることになるのは織り込み済みなのです。

保証人の側からすれば、「必ず支払いをするし、絶対に迷惑をかけない」からなどと言われて、保証人になったという経緯があるかもしれません。だからと言って、保証人に迷惑をかけないことだけを最優先にしていては、結果的にさらに迷惑をかける結果にもなりかねません。

したがって、保証人に対しては正確な事態をできるだけ早く伝えることが必要です。そして、保証人に保証債務を履行する資力が無いのであれば、保証人自身に弁護士等へ相談に行ってもらうしかありません。

なお、保証人に迷惑をかけないために、自己破産申立をする前に、保証人が付いている債務だけを返済してしまうような行為は絶対に避けるべきです。そのような行為を偏頗弁済(へんぱ べんさい)といい、破産法252条1項3号に定められた免責不許可事由に該当します。

第252条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。

(一から三 省略)

三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

(以下 省略)