2017年11月12日付の日経電子版の記事です。会員向けの記事なので、電子版に登録していないと続きが読めないのですが、個人版民事再生についてコンパクトにわかりやすく解説しています。

個人版「民事再生」が増加 自宅手放さず債務大幅カット 住宅ローンは免除されず
 個人民事再生の利用者は2016年、前年比13.3%増の9602件と2年連続で増えた。15年も同10.6%増と2ケタの伸びだ。16年は自己破産も13年ぶりに増加に転じた。

記事にもあるとおり、個人版民事再生は住宅ローンを抱えている方にとって非常にメリットがある手続きです。個人版民事再生でも住宅ローンは全額を支払う必要がありますが、それ以外の債務については最大8割の減額を受けることが出来ます。

たとえば、住宅ローン以外の借金が500万円だとすれば、その500万円のうち100万円を支払えば、残りの400万円についての免除が受けられるわけです(保有財産の清算価値が100万円未満の場合)。

なお、免除を受ける金額は80%ではなく、支払い可能額に応じてもっと少ない免除率による再生計画を立てるべき場合もあるでしょう。しかし、免除率が80%だと認可決定が得られない(小規模個人再生であれば、債権者の反対により否決される)からと、免除率を下げるという例は少ないだろうと思われます。

そもそも、一部の特定の債権者を除いては、個人版民事再生の再生計画案に反対してくることは通常ありません。たとえば、80%カットだと判定してくるだろうから、60%カットの再生計画案にしようというようなやり方は不要なわけです。

したがって、ほとんどの場合において債務の8割が減額されるわけですから、支払いが大幅に楽になります。100万円を3年で支払うとすれば月額は28000円程度です。住宅ローンに加えてこの金額を支払うことが出来るならば、個人版民事再生により500万円の借金を100万円に減らして完済することが出来るのです。

個人版民事再生は、安定した収入が得られる方でないと利用するのが難しいですが、現時点では収入が無かったとしても、今後は就職が決まる見込があるような場合なら利用可能です。実際にも、現時点で無職の方から、安定した収入を得られる仕事に就けるのを条件に、手続きのご依頼をいただくこともあります。

その後に、どうしても仕事が決まらなかった場合には、個人版民事再生ではなく自己破産の申立てへと債務整理方針の変更をすることも考えられます。それでも、現時点で無職だからといって個人版民事再生を利用するのは絶対に無理だということにはならないわけです。

また、この記事では触れていませんが、住宅ローンが無くても個人版民事再生を利用することもあります。

自己破産をするのでは無く一部であっても返済したいと考えて個人版民事再生を選択するケースもあります。そして、借入の内容に問題があるために、自己破産をした場合には免責不許可事由の存在が問題になりそうなときに、個人版民事再生を選択するということもあるでしょう。

小規模個人再生では債権者の反対により再生計画案が否決される恐れはあるものの、それ以外のことに関しては自己破産よりも安心して使える制度だとも個人的には考えています。個人版民事再生の利用をお考えの場合、申立ての経験が豊富な専門家(弁護士、司法書士)に依頼するのがよいでしょう。