破産法252条1項で「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする」としています。つまり、次の11個の事由に該当する場合には、免責不許可事由があるということです。

ただし、免責不許可事由がある場合には、必ず免責不許可になるということではありません。

同条2項では、「前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」としています。

これが裁量免責であり、多少の免責不許可事由があったとしても、現実には多くの場合で免責許可の決定が得られています。

1.詐欺破産罪に該当する行為

債権者を害する目的で、破産財団に属し、または属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

「破産財団の価値を不当に減少させる行為」とは、債務者の財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為(破産法265条1項2号)、債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為(同2号)などを指すと考えられます。

2.著しく不利益な条件での債務負担等

破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、または信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。

クレジットカードで購入したもの(商品券、乗車券など)を安い価格ですぐに処分してしまう行為は、「信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分」するのに当たります。

そして、「破産手続の開始を遅延させる目的」で上記行為をおこなうのが要件となっていますが、すでに支払い可能な状態にあるのに上記のような換金行為により現金を調達しようとするのは、それによって破産手続の開始を遅延させているといえるでしょう。

よって、クレジットカードによる、いわゆる換金行為は免責不許可事由に当たるわけです。

3.義務ではない担保の提供等

特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与または債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、またはその方法もしくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

4.浪費・賭博等の射幸行為

浪費または賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと。

浪費やギャンブル、その他の射幸行為をしたことのみでは無く、浪費やギャンブルをしたことによって「著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと」が要件となっています。

5.詐術取引

破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

6.帳簿の隠滅、偽造等

業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、または変造したこと。

7.虚偽の債権者名簿の提出

虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。

8.裁判所の調査への説明拒絶等

破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、または虚偽の説明をしたこと。

9.破産管財人等の職務妨害

不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。

10.免責不許可の期間

次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。

イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日

ロ 民事再生法第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日

ハ 民事再生法第235条第1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日

自己破産して免責許可の決定が確定したとき、給与所得者等再生における再生計画を遂行したとき、再生計画の認可決定が確定した後にハードシップ免責の決定が確定したときには、7年間の免責不許可期間があります。

なお、小規模個人再生における再生計画を遂行したときはここに含まれていないので、小規模個人再生の再生計画認可決定から7年以内であっても免責許可を受けられることになります。

11 破産法に定める義務等への違反

破産法第40条第1項第1号(破産者等の説明義務)、第41条(破産者の重要財産開示義務)、または第250条第2項(免責についての調査への協力)に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

自己破産の相談(個人債務者)