破産法253条1項により、「免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる」とされています。

「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(破産法第97条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいいます(破産法2条5項)

ただし、免責許可の決定が確定しても、すべての債務の支払い義務から免れることができるわけではありません。破産法253条1項ただし書きにおいて、次に掲げる請求権については、免責された後も残る(非免責債権)とされています。

  1. 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  3. 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
  4. 次に掲げる義務に係る請求権
    イ 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
    ロ 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
    ハ 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
    ニ 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
    ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
  5. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
  6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
  7. 罰金等の請求権

税金、悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権、民法で定められた各種義務(下記参照)、罰金などが非免責債権とされているわけです。

(同居、協力及び扶助の義務)

第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

(婚姻費用の分担)

第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)

第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。

4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

(扶養義務者)

第877条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

主債務者が、免責許可の決定を受けても、破産債権者が破産者の保証人等に対して有する権利、および破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼしません(破産法253条2項)