一般的に遺産を相続すると言われて思い浮かべるのは、亡くなった人が住んでいた家を譲り受けたり、残した現金などの資産を譲り受けるという、いわばメリットの方だと思います。
けれど、遺産相続には負の遺産も含まれるということを、自分が相続人となったときにすぐに考え付く人は少ないのではないかと思います。それだけ人間というのは、耳に心地よい話ばかり聞こうとするせいだと思います。ですので、相続にはよい面がある反面、負の面もあるということもしっかり頭の中に入れておく必要があると思います。
さて、誰かの遺産相続人になるのは、人間、誰しも誰かの子供として生まれてくる以上、一生のうちに何度かは経験するのが通常でしょう。この場合、家を譲り受ける、あるいは資産を譲り受けるというメリットの面だけを残していってくれれば、相続に関する複雑な手続きも、何とか頑張ってやらねば、と思える事でしょう。
問題は、負の遺産ばかりを遺していかれたときです。借金を遺していかれたら、相続によって代わって借金を返済するという義務が生じます。額の大きい借金の場合、相続によって自分自身の生活が立ち行かなくなる恐れがありますので、そんなことはどうしても避けなければなりません。
そこで知っておきたいのが相続放棄という手段です。これは、プラスとなる遺産相続もあるけれど、全体的に見てマイナスとなることの方が多いと判断した場合、あるいは前述したように借金の返済を負わなくてはならないような相続となる場合、遺産相続の放棄をすることができると定められたものです。
これにより、いわばどのような内容の相続もすべてお断りします、ということになるのです。兄弟姉妹間で遺産を巡って泥沼の争いとなることはよくありますが、そんなときも相続放棄をすることによって、遺産は手にできないものの、泥沼の争いから抜け出るというメリットがあります。
借金の返済を相続するのを放棄するのは当然ですが、後者のようなもめごともまっぴらごめん、と考える人にとっても、この相続放棄という手段は救いとなってくれるはずです。いずれにしても、遺産を相続してよかったと少しでも思えるなら、故人をしのんでありがたく頂戴すればいいと思いますが、そうではなく恨みに思うだけの遺産相続となるのであれば、速やかに相続放棄をし、複雑な渦中に飛び込むことだけはくれぐれも避けたいものだと思います。