相続人が2名以上いる場合、被相続人の遺産(財産、負債)を、誰がどれだけ引き継ぐかについてどのように決定するのでしょうか?
遺産分割の内容については、被相続人が遺言書によって指定することも可能ですし、相続人間の話し合いによることも出来ます。このための話し合いを遺産分割協議といいます。
1.遺言書がある場合
被相続人は、遺言によって、共同相続人それぞれの相続分を定めたり、遺産分割の方法を指定したりすることができます。そこで、遺言書により、誰が不動産を相続するのか定めておけば、相続人間の話し合いを経ることなく、相続登記をすることが可能です。
したがって、ご自身が被相続人の立場として考えるならば、相続人の間で話し合いがまとまらない可能性があるときには、必ず遺言書を作成しておくべきだといえます。
たとえば、再婚していて前妻との間にも子供がいる場合、当然その子供も相続人となりますから、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。しかし、自らの死後に、もともと付き合いの無かった相続人達が集まって話し合いをするというのは、相当に困難なのでは無いでしょうか。
けれども、遺言書があれば、遺産分割協議をすることなく相続登記ができるのです。
ただし、相続人全員の同意があれば、遺言によって定められた相続分や、遺産分割の方法と異なる内容で、遺産分割を行うことも可能です。
また、遺言書によって、遺産分割協議を経ることなく遺産の引き継ぎを行ったとしても、遺留分を有する相続人からは、遺留分減殺請求をすることが可能です。
先ほどの例でいえば、前妻との間の子は、当然、遺留分権利者ですから、自分にも遺産を引き継がせるよう要求することができます。これを遺留分減殺請求といいます。
2.遺言書がない場合
遺産分割の内容は、相続人の全員の話し合いによって決定します。この協議結果を文書にしたものが遺産分割協議書です。遺産分割協議書には相続人全員が署名押印し、この遺産分割協議書を添付して不動産の相続登記を行います。
もし、協議の結果に全員が同意しないと、遺産分割はできません。そのような場合、家庭裁判所に遺産分割調停の申立をすることになります。
また、遺産分割協議をする際に、相続人の中に未成年者がいる場合、親権者(父母)が未成年者の代わりに遺産分割協議に参加します。しかし、その親権者も未成年者と共に相続人である場合、親と子との間で利益相反することになります。
そのような場合、家庭裁判所で、その子のために「特別代理人」を選任してもらい、特別代理人が子の代わりに遺産分割協議に参加します。
たとえば、夫が死亡し、妻と未成年の子が相続人となる場合は、このケースに該当するので、子のために特別代理人の選任が必要となります。
遺産分割協議では、相続人の全員が合意するのであれば、法定相続分にこだわる必要はありません。たとえば、被相続人の妻が全ての財産を相続するとしても一向に構いませんし、現実にもそのような遺産分割協議がおこなわれることも多いです。
遺産分割協議により誰が被相続人名義の不動産を引き継ぐか決定した場合には、遺産分割協議書が不動産名義変更の必要書類となります。