相続による不動産の名義変更(相続登記)をするには多くの書類が必要になることが多いですが、とくに厄介なのが戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)の取得でしょう。
遺産分割協議による不動産の名義変更では、被相続人(亡くなられた方)についての、戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)は、その方が生まれてから(最低でも13歳くらいから)、亡くなるまでの全てが必要となるからです。
つまり、遺産分割協議は法定相続人の全員により行わなければなりませんが、遺産分割協議書に署名押印しているのが法定相続人の全員であることを、戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)により証明するのです。
たとえば、前妻(前夫)との間に子供がいれば、その子供も相続人ですし、結婚していていない相手との子供(非嫡出子)であっても認知していれば、もちろん相続人となります。そのため、被相続人が生まれた時までの全ての戸籍謄本等を取ることで、全ての子供が判明させることになります。
ご家族の方であれば、被相続人の子供については全て把握していると考えるのが通常でしょう。しかし、今のご家族の誰もが知らなかった子供の存在が、相続手続のための戸籍収集をきっかけとして判明することは決して珍しくありません。
また、ご家族の方は分かっているとしても、相続登記申請を受け付ける法務局(登記所)や、預金の引き出し依頼をされた金融機関の担当者にとっては、遺産分割協議書に名前の載っている人が、間違いなく相続人の全てであるかは提出された書類によって判断するしかありません。
そこで、誰が法定相続人であるか明らかにするために、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本が必要となるのです。
遺言書作成のすすめ
なお、現時点で全くの没交渉となっている推定相続人がいる場合、自らの死後に、その相続人の方から遺産分割協議書へ署名押印をもらうのが困難なことも多いです。そのような事態が想定される場合は、遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。遺言書があれば、遺産分割協議を行わずとも不動産の名義変更(相続登記)が可能ですから、上記のような困難に直面せずに済みます。
ただし、遺言書は法律的に有効なものでなければなりません。そのためには、公証役場で公正証書遺言を作成するか、弁護士・司法書士等の法律専門家の助言を得たうえで自筆証書遺言を作るのが安心です。