相続手続をおこなう際に、遺産の中に不動産(土地、家)がある場合には、その名義変更手続きをします。相続による不動産の名義変更手続きのことを、一般に「相続登記」と言っています。
不動産登記の専門家は司法書士です。正確にいえば、業務として不動産登記をおこなえる資格者としては、司法書士の他に弁護士がいます(なお、司法書士、弁護士以外の者、たとえば行政書士などが、業務として不動産登記をおこなうのは違法行為です)。
ただし、相続などの不動産登記を単独で請け負う弁護士は皆無だと思われるので、現実には、不動産の名義変更(相続登記)を依頼するならば、司法書士以外の選択肢は無いといってもよいでしょう。
司法書士に頼まずに、自分で相続による不動産の名義変更をしようとする方もいます。不動産を購入した場合と違って、相続の場合にはすぐに名義変更をしないと困るようなことはありません。そこで、自分で戸籍謄本などを集めたり、法務局に行ってみたりするわけです。
実際、法務局の相談窓口にいくといつも相談者であふれています。法務局には専門の相談員がいて、一般の方への相談に対応してくれますから、そこで質問してみるのもよいでしょう。ただ、相続による名義変更の場合、相談に行ってみたのはいいけれども、実際に自分で手続きするに至らなかったという方がほとんどだと思われます。
そんなに簡単に不動産の名義変更(相続登記)がおこなえるならば、そもそも司法書士などの専門家に頼むことが一般的にはなっていないでしょう。役所関係の手続きの中でも簡単に手続きができるものについては、ご自分で手続きをするのが通常です。
たとえば、住民票を写したり、パスポートを作ったりといった手続きをわざわざ専門家に頼む人はいないでしょう。しかし、法務局や裁判所の手続きは一般の方には難しいので、専門家に依頼するわけです。
ただし、裁判だって弁護士や司法書士に頼まずに自分ですることもできます。現実にも簡易裁判所でおこなわれる少額訴訟などの裁判では、専門家に頼まずに自分で手続きをしている方もいます。
けれども、相続登記の手続きは、不動産という高額な財産の名義変更をする手続きですから、万が一にも間違いがあってはいけません。相続の場合でいえば、自分の名義にしたいと登記申請をしてきた人が本当にその不動産の所有権を取得したのか、しっかりと確認をする必要があります。
そこで、提出するべき書類に不備があれば、絶対に相続登記(名義変更)を受け付けてくれることはありませんし、法務局の人が申請人に有利になるように取りはからってくれることもありません。そのため、相続による不動産の名義変更は、不動産登記手続きの専門家である司法書士に頼む必要があるのです。