遺言書による場合を除き、相続登記をするためには被相続人が生まれたときにさかのぼる全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)が必要です。

ところが、戸籍謄本等が災害等により滅失したために交付を受けられないことがあります。とくに、東京に本籍があった方の場合、関東大震災や、第二次世界大戦の大空襲で、戸籍謄本の原本が焼失してしまったために交付を受けられないことが珍しくありません。

戸籍簿の全部又は一部が、滅失したとき、又は滅失のおそれがあるときは、法務大臣は、その再製又は補完について必要な処分を指示する(戸籍法11条より抜粋)とされていますが、昭和20年3月の東京大空襲では区役所保管の戸籍謄本原本、および東京法務局保管の副本の双方が焼失してしまったために、再製が不可能だったようです。

例えば、墨田区発行の「除籍謄本の交付ができないことについての告知書」には、次のような記載があります。

・本籍 本所区業平橋○丁目○番地の1
・筆頭者 ○○ ○○
・消除年月日 不詳

上記の除籍簿および東京法務局に保管の副本は、昭和20年3月10日に戦災で焼失しました。このため再製することができないので、除籍の謄本は交付できません。

除籍謄本が滅失した場合の相続登記の添付書類

上記のとおり、除籍謄本などが滅失して、その謄抄本が手に入らない場合、被相続人の全員が誰であるかを戸籍謄本などにより証明することは不可能となります。

そこで、不動産の名義変更(相続登記)の実務では、それ以外に現存する戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)により、他に相続人がいることが推認されないならば、取得できた戸籍謄本等の他に、「除籍謄本の交付できないことについての区市町村長の証明書(告知書)」、および「他に相続人はいない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付)を添付することで相続登記申請が可能な取り扱いとなっています。

相続人はその相続登記手続に利害関係がありますから、利害関係者が自分で証明をしても意味が無いようにも思えます。しかし、他に当時のことを知る人を探して証言してもらうなどということは非常に困難な場合が多いでしょうから、相続人自身が当事者として証明をすることとされているのです。