未成年者のための特別代理人選任

親権と利益相反行為

「成年に達しない子は、父母の親権に服する」とされています(民法818条)。この親権の内容には大きく分けて、子の身上監護権、財産管理権があります。

この財産管理権の一部として、子の財産に関する法律行為についてその子を代理する権利、いわゆる「法律行為の代理権」があります。

ところが、親権者による法律行為の代理権は、利益相反行為にとなる場合には行使することができません。具体的には次のとおりです。

1.親権者と、その親権に服する子の利益が相反する場合
2.同一の親権者の親権に服する子の一方と、他方との間で利益が相反する場合

1の場合には、子のために特別代理人の選任が必要となり、2の場合には利益相反する子の一方のために特別代理人の選任が必要です。

親子の間で利益相反行為にあたるかの判断

利益相反行為にあたるかどうかは、主に行為そのもので判断すべきであって、親権者の意図や動機あるいはその効果を考慮すべきではないとされています。よって、「子の債務につき、子が所有する不動産に抵当権を設定することは、借入金を親権者自身の用途に供する動機があっても利益相反にならない」が、「親権者自身の債務につき、子の所有不動産に抵当権を設定することは、借入金を子の養育費に充当する意思があったとしても利益相反になる」とされています。

相続手続において、特別代理人の選任が必要となる主なケースは、相続放棄、遺産分割協議の場合です。

子の相続放棄と利益相反行為

相続放棄では、親権者が子を代理して相続放棄し、自らは相続放棄しなかったとすれば、親権者が遺産を独占できてしまうからです。よって、このような恐れがない場合、具体的には「親権者が相続放棄申述をした後に、未成年者全員を代理して相続放棄申述をする」、また「親権者と未成年全員が同時に相続放棄申述をする」場合には特別代理人選任は不要です。

親子間の遺産分割協議と利益相反行為

遺産分割協議の場合には、共同相続人のうち誰がどれだけの遺産を相続するかについて相続人間で利害の対立があるから、一人の親権者が複数の子を代理して遺産分割協議を行えば利益相反行為となります。

よって、その遺産分割において、親権者、および子二人の全員が相続人である場合、子二人について、それぞれ別々の特別代理人を選任する必要があります。

特別代理人の選任申立ては、子の住所地の家庭裁判所へ行います。特別代理人になる人の資格にはとくに制限はなく、子の親族であるかどうかも関係ありません。特別代理人は家庭裁判所が選任するものではありますが、現実には、申立書に記載した「特別代理人候補者」がそのまま選ばれるケースがほとんどだと思われます。

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相続登記とサイン証明(署名証明)

遺産相続手続をするために作成した遺産分割協議書へは、相続人全員が署名および実印による押印をし、印鑑証明書を添付します。この遺産分割協議書を使って、ご自宅の名義変更登記や、その他の遺産相続手続をするわけです。

しかし、相続人が海外に住んでいる場合には、印鑑証明書の発行を受けることはできないのが通常です。そこで、印鑑証明書の代わりにサイン証明(署名証明)を利用することになります。

サイン証明とは、海外に在留し日本に住民登録をしていない方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして発給されるもので、申請者の署名及び拇印が領事の面前でなされたことを証明するものです。

具体的な手続としては、遺産分割協議書を在外公館(外国にある日本国大使館、総領事館)に持参して、領事の面前で署名および拇印を押捺し、この遺産分割協議書と署名証明書を綴り合わせて割り印をしてもらいます(奥書認証)。

なお、遺産分割協議書への署名は領事の面前で行う必要がありますので、事前に署名をせずに持参しなくてはなりません。

サイン証明には、上記のように「持参書類(遺産分割協議書)とサイン証明を綴り合わせて割印し、一体の書類としたものに奥書認証したもの」の他、「申請者の署名を単独で証明するもの」があります。

後者の場合は、遺産分割協議書と一体化しているわけでは無く、サイン証明のみが単独で発行されるわけです。これでも、不動産の名義変更手続きがおこなえることもありますが、登記申請に使う場合は、原則として前者の方法によるサイン証明(署名証明)を用意すべきです。

相続人が海外に住んでいる場合、上記のように通常とは異なる手続が必要となります。相続登記には期限がありませんから、そう遠くない将来に帰国して日本国内に住所を移すことが決まっているのであれば、それから名義変更の手続きをおこなっても差し支え得ないと思います。

しかし、長い時間が経過してしまうと、相続登記の手続が困難になる恐れもありますので、まずは登記の専門家である司法書士に相談した上で判断するのが良いでしょう。

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行方不明者がいる場合の遺産分割協議

相続人中に行方不明者がいる場合、家庭裁判所へ「不在者の財産管理人選任申立」をし、不在者の財産管理人を選任してもらうことになります。

不在者とは「それまでの住所(または居所を去って)容易に帰ってくる見込みのない者のこと」をいい、生死不明であるとは限りません。また、仮に生死不明だったとしても失踪宣告を受けるまでは「不在者」であることになります。

行方不明(不在者)であっても、もちろん相続権はありますから、不在者を除外して遺産分割協議を行うことはできません。そこで、遺産分割協議をするためには、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要があるのです。

具体的な手続としては、まず、「不在者の財産管理人選任申立」をします。そして、選任された相続財産管理人が「不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立」をすることになります。遺産分割や、相続放棄などは、不在者の財産管理人の権限を越える行為であるため、家庭裁判所の許可が必要だからです。

なお、ただ単に「どこに住んでいるか分からない」というのは不在者ではありません。この場合、住民票や戸籍附票などにより現在の住所を調査して、その相続人に連絡を取り遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。調査を尽くしても、行方がどうしても分からないというときにはじめて不在者であるといえるのです。

また、行方不明者がいても、保存行為として法定相続分通りに登記することは可能です。しかし、行方不明者を含めて不動産が共有になっている状況では売却することもできませんし、目的を達せられないことが多いでしょう。

不在者の財産管理人選任申立や、その他の家庭裁判所提出書類の作成は司法書士に依頼することができます。裁判所に提出する書類の作成を業務としておこなうことができるのは、弁護士と司法書士に限られます。

弁護士、司法書士以外の、遺産相続手続の専門家を名乗る人に依頼したとしても、家庭裁判所に提出する書類の作成をしてもらうことはできませんので注意しましょう。

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2012年10月25日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:遺産分割協議

未成年者がいる場合の遺産分割協議

被相続人が遺言書を作成していない場合には、法定相続人の全員により遺産分割協議をすることになりますが、未成年者については自分で遺産分割協議に参加することはできません。

そこで、遺産分割協議をする際、相続人の中に未成年者がいる場合には、親権者(父母)が未成年者の代わりに、法定代理人として遺産分割協議に参加するのが原則です。

しかし、その親権者も未成年者とともに相続人である場合、親と子との間で利益相反が生じます。たとえば、夫婦と子供が二人の四人家族で、夫が死亡したとします。このときの相続人は妻および二人の子の合計三人ですから、遺産分割協議はこの三人で行うことになります。

このとき、子が未成年だとすると、その子の親権者は母一人となります。この場合、母と子はともに相続人ですから、母が親権者として遺産分割協議を行えるとすれば、自由に一人で決めてしまえることになります。

このように、未成年者とその親権者との間で利益相反が生じるときには、家庭裁判所で、その未成年者のために特別代理人を選任してもらいます。そして、特別代理人が未成年者に代わって、他の相続人との間で遺産分割協議を行うことになります。

なお、特別代理人に選任される人の資格についてはとくに制限はありませんが、通常は、特別代理人選任の申立人である親権者が推薦した人が選ばれています。そのため、未成年者の、祖父母や、伯父(叔父)、伯母(叔母)が特別代理人になることが多いと思われます。

家庭裁判所に特別代理人選任の申立をおこなう際には遺産分割協議書の案を提出します。そして、特別代理人選任審判書にはその遺産分割協議書が付けられます。

つまり、実際には特別代理人が選ばれた後に遺産分割協議をおこなうわけでは無く、特別代理人が選ばれたときには既に遺産分割協議の内容が決まっているわけです。そして、特別代理人がすることといえば、すでにできあがっている遺産分割協議書に署名押印し印鑑証明書を差し出すだけです。

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2012年10月25日 | コメント/トラックバック(0) |

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