被相続人が所有していた土地や家の名義変更(相続登記)をする際、法定相続人が複数いるときには、相続人の全員により署名押印をした遺産分割協議書を添付するのが通常です。
しかし、相続人が複数であっても、法定相続人の全員がその法定相続分どおりの持分で共有名義に登記をするときには、遺産分割協議書を添付する必要がありません。
たとえば、法定相続人が被相続人の妻、長女、長男の3人だったとすると、その法定相続分は妻2分の1、長女と長男はそれぞれ4分の1ずつです。
このとき、被相続人が所有していた不動産を、妻2分の1、長女・長男4分の1ずつの持分による共有名義で、相続を原因とする所有権移転登記をする際には、遺産分割協議書が不要だというわけです。
上記のケースでは、被相続人の妻が単独で相続する場合が最も多いと思われます。次いで、同居の子供がいるときには、ずっと面倒を見ることを条件にして、その子供の名義にすることもあるでしょう。
手続きの面だけを考えれば、被相続人である夫から妻の名義に変更したとして、順番からすれば次は妻について相続が開始することになります。そうなれば、さらに子供の名義に変更することになるでしょうから、後を継ぐ子供が決まっている場合には、直接その子供の名義にしてしまうわけです。そうすれば、何度も名義変更の手続きをしないで済みますから、手間も費用も節約できるのは事実です。
このように誰の名義に変更するかについて、相続人の全員が合意に至れば良いのですが、誰か一人の名義にすることに納得しない相続人がいる場合には法定相続分どおりの共有にしておくとの選択肢があります。とくに揉めていない場合でも、たとえば相続人が子供二人のみ(兄弟、姉妹)の場合には、不公平にならないように半分ずつの共有にしておこうと考えることもあります。
ただし、このような場合に、後になってやっぱり誰かの単独名義にしようと思ったとします。しかし、すでに半分ずつの所有権をもっているわけですから、その名義を変更しようとすれば贈与だとみなされて、高額な贈与税がかかるおそれがあります。