1.債務(借金)も相続されます

亡くなった方(被相続人)の遺産は、相続人が引き継ぎます。ここでいう遺産には、プラスの財産(債権)だけでなく、マイナスの財産(債務、借金)も含まれます。

したがって、被相続人に借金(債務)があった場合、その債務の支払い義務も相続人に引き継がれます。たとえば、夫婦と子2人の4人家族で、亡くなった夫に債務(借金)があった場合、妻と2人の子供が支払い義務を相続します。

仮にこの子供たちが未成年者であったとしても、債務の支払い義務を引き継ぐことには変わりません。よって、事情も分からないような生まれたばかりの子供が多額の借金を背負ってしまうことにもなるのです。

もちろん、被相続人が債務だけでなく預貯金やその他の財産を遺してくれていれば、その財産により債務の支払いをして、その残りを相続すれば済みます。しかし、被相続人の財産により、全ての債務の支払いができない場合、つまり、財産より債務の方が多い場合が問題です。

2.親の相続を放棄するとの選択

このような場合に選択できるのが相続放棄の制度です。家庭裁判所で相続放棄の手続をしてそれが認められれば、親(被相続人)の債務の支払い義務を引き継がなくて済みます。

ただし、相続放棄をした人は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなすとされています。よって、負債(債務)を引き継がないで済むのと同時に、プラスの財産についても一切引き継ぐことができなくなるので要注意です。

たとえば、銀行預金を引き出して自分のために使ってしまったような場合には、相続放棄が認められないことになります。相続人で無くなる以上は、親子などの家族関係があるとしても、遺産に対しては一切の権利を持たないのです。

相続放棄をするには、相続放棄しようとする相続人本人が、被相続人の最後の住所地(相続開始地)の家庭裁判所に、相続放棄の申述をします。相続放棄申述の手続は、相続放棄申述書、戸籍等の添付書類、および収入印紙・切手を、家庭裁判所に提出することで行います。

また、相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内(熟慮期間)にしなければなりません。必要書類を揃えたりするにも時間がかかりますから、相続放棄を考えたら、早急に司法書士等の専門家に相談するべきです。

3.司法書士による家庭裁判所の手続

裁判所に提出する書類の作成は、弁護士だけでなく司法書士の専門分野でもあります。相続放棄の申述を弁護士に頼むこともできますが、司法書士に家庭裁判所提出書類(相続放棄申述書)の作成を依頼した方が費用が抑えられる場合が多いでしょう。

相続放棄の申述は、申立後に難しい手続をするわけではありません。したがって、弁護士を代理人にする必要性もあまり無いと思われます。また、司法書士に書類作成を依頼した場合でも、家庭裁判所への相続放棄申述書の提出も司法書士にお任せいただけますから、ご依頼者の負担はありません。